おちゃらけミクロ経済学: 10月 2012

2012年10月31日水曜日

限界費用逓増の法則と微分 その4


本当は言いたくなかった「限界」の話



当ブログは、ここ3回くらい、2つの異なる線形をしたグラフに基づいて、お話を展開しています。
限界費用逓増の法則と微分 その1 限界費用逓増の法則と微分 その2 
限界費用逓増の法則と微分 その3


パン屋さんの費用曲線その1





パン屋さんの費用曲線その1



パン屋さんの費用曲線その2




パン屋さんの費用曲線その2



ですが、上の2つのグラフは、実はわざと、不親切な書き方をしています(笑)





「限界」の本当の意味とは?




縦軸の項目名にご注目ください。
それぞれ、単に「費用」と書き、非常にあいまいな言い方をしています。




本当は、その1の縦軸には、総費用
その2には、1個あたりの追加的費用という言葉が入ります。
ミクロ経済学では、この1個あたりの追加的費用のことを、限界費用といいます。



縦軸名が入ったパン屋さんの費用曲線その1






縦軸名が入ったパン屋さんの費用曲線その1




縦軸名が入ったパン屋さんの費用曲線その2



縦軸名が入ったパン屋さんの費用曲線その2






経済学関連の本を読んでいると、限界という言葉が、しょっちゅう出てきます。
限界という言葉は、本文のタイトルにも使ってます。他には、こんなものがあります。


  • 限界収穫逓減
  • 限界収穫逓増
  • 限界効用逓減
  • 限界効用逓増



これらは、漢字ばっかりですが、ホトケさんの戒名ではありません(笑)
限界という部分は、追加的な変化のという言葉に置き換えて、差し支えありません。




一つ目の限界収穫逓減とは、追加的に変化すると生産量は次第に少なくなる、
という意味です。(くわしくは、また機会があれば説明します)



経済学に限らず専門用語は、ただやみくもに、暗記することに意味はありません。
大正時代から昭和30年代に、東京大学で教鞭をとられた、ある高名な民法学者の先生も、
こうおっしゃてます。



"法律を学ぶには、暗記しないで、理解しなければならない"
我妻榮「民法案内1~私法の道しるべ」勁草書房P1



ですが、限界は、結構便利な概念なんで、この際ルールは無視して、
そのまま覚えてしまいましょう。我妻先生、ごめんなさいm(。・ε・。)mスイマソ-ン



やっと出てきた微分と「限界」の関係




ちなみに、高等学校などで習う、微分は、追加的な変化率を表現するための一つの方法と
考えられます。管理人も、高校を卒業して、十何年もしてから気づきました(泣)




微分を習う高校生

[高校生ー広島駅] MOV02302 / xsix



微分と同様、限界の概念は、慣れていないうちは、理解するのが難しいと思います。
(管理人の説明が下手なだけかもしれませんが)
ですので別の機会(リンクおまけ)を設けて、別の観点から、限界概念を考えてみましょう。
(つづく)






2012年10月29日月曜日

限界費用逓増の法則と微分 その3

パン屋さんで限界概念を使う





パン生産の費用のグラフとして、異なる線形のグラフが存在するのは、どうしてでしょうか?
前々回前回のブログより)







ますだ製パン / Sig.





その答えについて、限界という概念を使って、考えてきました。
パン屋さんの経営者の立場に立って、限界の概念を適用すると、以下のような表現になります。




パン屋さんの費用曲線と3本の接線




パン屋さんの費用曲線と3本の接線





パン屋さんで限界概念の説明




この図の特徴は、ザクッと分けて、3つあります。




  1. 生産個数が、少ないときは、設備や人員が遊んでいる。増産がラク
  2. 生産個数が、中ぐらいのときは、設備や人員は、ほぼ100%の稼働。増産は、コストが発生
  3. 生産個数が、大きいときは、設備や人員が、100%超の稼動。増産は、莫大なコストが発生




パン屋さんの限界概念をもっと詳しく




パンを作るために、工場を建てて、人を雇っても、生産量が少なければ、
いわゆる「遊び」の部分が多いため、生産量を増やすとしても、大きなコストを必要としません。




生産個数が増え、工場が、それなりに「回っている」状態になっているときに、
生産を増やそうとすると、それなりのコストがかかります。
労働者に支払う時間外手当や、材料費水道・光熱費などの上昇が、考えられます




そして、工場のラインも、労働者も、100%フル稼働をしている中で、
さらに生産量を増やそうとすれば、既存の設備や人員では、もう生産が、追いつきません。
新たな用地の取得工場の建設労働者の採用など、巨大なコストが必要になります。





コストのかかる器材
器材 / darkensiva





もう一度限界概念に戻りましょう




ここで異なる線形のグラフについて、冒頭の問題提起を考えてみましょう。
曲線のグラフは、パンを作るときの総費用を表してまいます。
直線のグラフは、パンを1単位追加的に作るときの、その追加費用を表しています。



パン屋さんの費用曲線その1





パン屋さんの費用曲線その2




限界の考え方について、理解を深めるため、次回は、微分について考えます。
といっても、dx/dyとか、⊿yの記号を使った、計算式は出しませんので、ご安心を!
(つづく)



参考文献:グレゴリー・マンキュー「マンキュー経済学第2版Ⅰ」(P142)東洋経済新報社



2012年10月25日木曜日

限界費用逓増の法則と微分 その2

費用曲線のおさらい





さて、前回のブログで2つのグラフを示しました。
それぞれ、わが町の製パン業界での、費用を示すグラフでした。



パン屋さんの費用曲線その1




パン屋さんの費用曲線その1

(特徴)

  • 生産個数が少ないときは、傾きが小さい
  • 生産個数が多いときは、傾きが大きい



パン屋さんの費用曲線その2



パン屋さんの費用曲線その2



(特徴)

  • 生産個数に係らず、傾きは常に一定




総費用について




先に、ミクロ経済学の専門用語を使って、結論を述べると、
パン屋さんの費用曲線その1は、生産個数の総費用を表しています。
パン屋さんの費用曲線その2は、生産個数の限界費用を表しています。



総費用は、その名の通り、パンを生産するのにかかった、全ての費用を表します。
主に次のものが、挙げられます。



  • 土地の取得費用
  • 工場の建設代金
  • 製造ライン設置費用
  • 材料費(小麦粉・砂糖・塩など)
  • 水道・光熱費
  • 人件費
  • その他販売経費



アンパンマンの銅像

アンパンマンの銅像 / Takanori Ishikawa




限界費用について




限界費用とは、もう1単位のパンの生産量を追加するときにかかる費用の増加分、
を表します。おちゃらけミクロ経済学名物の、作図で考えてみましょう。
総費用の3ヶ所に、それぞれ直線をあてがい、傾きを観察します。



パン屋さんの費用曲線と3本の接線




パン屋さんの費用曲線と3本の接線



  1. 生産個数が少ないときは、傾きが小さい
  2. 生産個数が中ぐらいのときは、傾きが中ぐらい
  3. 生産個数が大きいときは、傾きは大きい


何だか、見たまんまのことを、説明していますね。
ミクロ経済学的な言い方に換えると、表現はこうなります。


  1. 生産個数が少ないときは、もう1単位のパンを作るための追加的な費用は、少ない。
  2. 生産個数が中ぐらいのときは、もう1単位のパンを作るための追加的な費用は、中ぐらい
  3. 生産個数が大きいときは、もう1単位のパンを作るための追加的な費用は、大きい。



ちょっと分かりにくいですね。
今度は、パン屋さんの立場に立って、より商売的な言い方をすると、表現はこうなります。
直感的に考えるならば、商売的な言い方が、もっともピンとくるかもしれません。


  1. 生産個数が少ないとき設備や人員が遊んでいる。増産が、ラク
  2. 生産個数が中ぐらいのとき設備や人員は、ほぼ100%の稼働。増産はコストが発生
  3. 生産個数が大きいとき設備や人員が、100%超の稼動。増産は莫大なコストが発生



パン屋さんの費用曲線を商売的に説明する


パン屋さんの費用曲線を商売的に説明する




限界費用で使われている、限界の考え方について、
なれないうちは、いまいち分かりにくいかもしれません。
次回のブログで、噛み砕いて説明してみましょう。
(つづく)







2012年10月24日水曜日

限界費用逓増の法則と微分 その1

微分というビッグワード




「どうやったら、ブログの訪問者が増えるか?」
結構、悩みのタネです。といっても、月間のユーザー数が200に満たない、ぺーぺーなんですが
(2012年10月17日現在)。




当ブログでは、GoogleAnalytics(リンク)で、
ブログの訪問者数や、ユーザー数、ページのビュー(PV)数、滞在時間などを計測しています。




GoogleAnalytics




これらを観察していると、あることに気が付きます。
Google検索やyahoo検索を通じて、来られる方の滞在時間が、非常に長いことです。




こんなぺーぺーなブログなのに、
30分もとどまっていていただく方も、いらっしゃいます。なんともありがたいことです。
ですが、そんな人は、20人に1人ぐらいの割合です。




タグ付けがなってないとか、ソーシャル機能が、活用できていないとか、
いろいろと、課題や対策は、目につきます(泣)



そんな中、現在、管理人が、一番気になるは、キーワード対策です。
分からないことがあれば、今のご時世、みなさんとりあえず「ググり」ますから。




微分とその他キーワードの比較




おちゃらけミクロ経済学の過去ブログで登場した、
主なキーワードの、月間検索ボリュームは、数百~数千です。
ボリュームが大きいキーワードでも、せいぜい20,000程度のオーダーです。
(2012年10月17日現在)




  • 需要と供給          720
  • 比較優位           5,400
  • 自由貿易         27,100
  • ベーシックインカム    12,100





ところが、微分というキーワードで、月間検索ボリュームを調べると、
なんと、246,000!ケタが1つ違いました!



ちなみに「AKB48」で調べると、5,000,000(500万)。これぐらいになると、もはや別格なんでしょう。
それでも、当ブログで、数十万オーダーのキーワードを扱うことは、珍しいことだと思います。










おそらく微分は、検索ロボットには、好かれている言葉なんでしょう。
ただし、肝心なのは、(検索ロボットに好かれる≠人間に好かれる)、ということです。



微分→微か(かすか)に分かる
積分→分かった積り(つもり)



という具合に、あまり芳しくない噂も聞きますし(笑)




そういうことなんで、以下の文章では、検索ロボットだけでなく、
人間にも好かれる文章を、心がけていきたいと思います。



費用と微分の関係





以前、当ブログに「わが町のパン屋さん」が、5軒登場しました。
取引利益と個別消費者余剰




そのときは、取引利益で登場してもらいましたが、
今回は、費用について、スポットを当ててみましょう。
その費用と生産量について、5軒分をまとめると、以下の2つの作図ができます。



パン屋さんの費用曲線その1




パン屋さんの費用曲線その1



パン屋さんの費用曲線その2



パン屋さんの費用曲線その2




どちらも、費用の曲線には、違いありません。
ですが曲線のどこに注目するかで、違いが表れます。この違いを表すのが、微分です。
(つづく)




2012年10月20日土曜日

ベーシックインカムまとめ

ベーシックインカムのおさらい




前回前々回ベーシックインカムの話を振ってみました。


  1. ドラえもんにお願いして、「もしもボックス」を出してもらう。
  2. もしもボックス」で「もしベーシックインカムが導入されたら?」というお願いをする。
  3. その後、労働市場における労働供給曲線を観察すると、傾きが、「垂直」から「水平」になる。


労働供給曲線が、「垂直」から「水平」になると、
労働量の減少のわりに労働の価格(賃金)の減少が小さくなります。
そのため、労働者にとっても、企業にとっても、フレキシブルな労働時間体系を、設定しやすくなります。




垂直な労働供給曲線に対して左シフトした労働需要曲線




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水平な労働供給曲線に対して左シフトした需要曲線



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つまり、何らかの事情(育児・介護・自身の教育訓練など)によって、
労働時間を短縮することについて、正のインセンティブが、働くことになります。



ベーシックインカムのデメリット




いいことづくめのように見える、ベーシックインカムですが、デメリットもいくつか考えられます。



1.実証研究や実例が少ない
厚生労働省」「ベーシックインカム」などキーワードで、Google検索しても、
実証研究をしている例がない(2012年10月20日現在)



実例についても、管理人が聞き及ぶ限りで、導入されている国はデンマークのみです。
デンマークでは、18歳以上の国民全員に最低生活費が、支給されているそうです。



2.「自己責任」のルール
最低限度の生活費にも困る人が、何らかの理由で生活費以外のことに使って、なくしててしまうと、
それ以上のセーフティーネットによって救われることはなくなる。



3.「クビを切られても安心の社会」ということが前提
もし「クビを切られない社会のしくみ」が、機能している時、
ベーシックインカムの存在意義が、あいまいになる。



ベーシックインカムについて個人的見解




導入に是非のあるベーシックインカムですが、
個人的には、導入してほしいなぁ、と思います。



というのは、労働供給曲線が、水平になることによって、
労働の移動(転職、新規事業の立ち上げなど)が、容易になるからです。
そうなると、イヤイヤ仕事に就いていた人が、自分自身で考えた好きな仕事に
変えやすくなるからです。



そうしたら、サービスの受け手側(消費者側)にとって、
もっと、気持ちよくいろいろなサービスを受けられるようになるんじゃないかな?と思ったりもします。
(もちろん、お金が支給されて単純に嬉しいということもありますが)


好きな仕事であれば、すすんで問題点を解決し、
生産物の付加価値を高めるインセンティブを高められるのではないでしょうか?



そうなってくると「ドラえもん」にまたお願いして、
四次元ポケットから「ポータブル国会」というひみつ道具を出してほしいと思います(笑)




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Board of Public Works Meeting / MDGovpics




ドラえもんのひみつ道具:「ポータブル国会」


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ベーシックインカムおまけ


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ちなみに「ベーシックインカムが導入されたら働かない人が出る」という
デメリットも出てきそうですが、これはデメリットには、入らないと思います。



なぜなら、支給する最低生活費が、現在の金額(2012年10月)で、
5万円程度のものであれば、衣食住を維持するだけで精一杯で、
それ以上の消費(交際、娯楽など)を行うことは、かなり困難だからです。



人間の「見栄」を見たそうすれば、結局働かざるえない、ということになるのではないでしょうか?



(ベーシックインカム編終わり)




参考文献:
小飼 弾「働かざる者飢えるべからず」サンガ
新田ヒカル・星飛雄馬「やさしいベーシックインカム」サンガ
池田和明「利益力の源泉~いかに付加価値を創出するか」ダイヤモンド社



2012年10月17日水曜日

ベーシックインカムと「もしもボックス」

「もしもボックス」を出してもらいましょう




今回は、前回のブログのつづきものです。
ドラえもんのひみつ道具である「もしもボックス」を借りてみます。



労働供給曲線が垂直な状態で、
「もしも、ベーシックインカムが導入されたら?」という実験を行ってみましょう。



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ベーシックインカムとは?



まず、ベーシックインカムの定義は、以下の通りです。


"交付にあたって資力調査や就労要件がない、無条件で全員に対して 個人単位で交付される所得のこと"


新田ヒカル・星飛雄馬「やさしいベーシックインカム」サンガ P109より引用


つまりベーシックインカムとは、人間が生存するための必要最低限の所得を
国民全員に対し、一律に支給する制度
のことです。



もしもボックス」でベーシックインカムを導入し、
ミクロ経済学的な観察をすると、労働供給曲線の傾きがより水平に近くなるか、
と推測されます。



水平な労働供給曲線




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ベーシックインカムのメリット



それでは、この曲線の特徴と労働供給曲線が垂直となる理由を考えてみましょう。



(労働供給曲線が水平であることの特徴)

  1. 労働者は、労働時間を減らすことが容易になる。
  2. 企業にとって、労働者を整理解雇することが、容易になる。
  3. 労働者の労働移動が、容易になり、産業の発達が促進される可能性がある。


労働供給曲線が、「水平」になるということは、
仮に、労働需要が左シフト(雇用量が減少)しても、賃金は下がりにくなる、ということです。



労働者は、教育訓練や家庭生活に従事するために、
労働時間の短縮や、転職を行ったとしても、賃金が減少する割合が、小さくなります。
そのため、企業も整理解雇をしやすくなり、新しい産業に、労働力が移動しやすくなります。



水平な労働供給曲線に対して左シフトした需要曲線




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それでは、ベーシックインカムを導入すると、労働供給曲線の傾きが、水平に近づくのでしょうか?
管理人は、最低限度の生活費支給による「心理的効果」を、理由としてあげます。
要は、「仕事がなくても食うには困らん」という、精神的余裕が発生する、と考えています。


所得補填はベーシックインカムの真の狙いではない



他に、労働供給曲線が水平に近づく理由として、
ベーシックインカムによって、所得が補填されるから、という理由も考えられるかもしれません。
確かに、これによって、労働供給曲線の上方にシフトすることは、考えられます。



水平な労働供給曲線の上方シフト





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しかし、(賃金+ベーシックインカムの支給で)曲線がシフトしているというだけで、
傾きそのものをを変える、ということはできません。



そもそも賃金は、企業が支給するものであり、社会保障給付の一種である
ベーシックインカムを、労働市場の価格に、「下駄をはかせる」と考えるには、
少々無理があるように思います。
(つづく)








2012年10月15日月曜日

ベーシックインカムとドラえもん

四次元ポケットから「もしもボックス」




「もし△△△が、●●●だったら?」
私たち人間は、ときどきこんなことを考えてしまいますね。



私は、人さまよりも過去にとらわれることが多いので、余計に強く考えてしまいます。
ですので、「ドラえもんがいてくれたら…」、「四次元ポケットがあったら…」
とか、よく考えてしまいます(笑)



そんなドラえもんのひみつ道具に、
もしもボックス」というものがあります。
「もし△△△が、●●●だったら?」という仮想世界をつくりだす「実験装置」です。



おちゃらけミクロ経済学に「もしもボックス」を絡ませて記事を展開していきましょう。





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垂直な労働供給曲線の特徴



以前、当ブログで労働供給曲線が、「垂直」であることを紹介しました。
労働供給曲線が、「垂直」であることは、労働量の減少に対して、
労働の価格(賃金)の下がる割合が、大きいことを指します。
ちょうど下のような図の状態です。(参考ブログ:社会保険料と弾力性



垂直な労働供給曲線



垂直な労働供給曲線





労働供給曲線が「垂直」であるとき、労働需要曲線(雇用)が、
左シフトすると、労働の価格(賃金)は、雇用量よりも大きく下落します。



垂直な労働供給曲線に対して左シフトした労働需要曲線




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垂直な労働供給曲線の問題点



この状態になると、いくつか考えなければならないことが発生します。



(労働供給曲線が垂直であることの問題点)


  1. 労働者は、労働時間を減らすことが難しくなる。
  2. 企業は、労働者を整理解雇をすることが難しくなる。
  3. 労働者の労働移動が、困難になり、産業の発達が阻害される。



特に、1の問題が、顕著です。
家庭の事情や、自らの教育訓練のために、労働時間を減らそうとすれば、
衣食住などの「基礎的な消費」を、脅かしてしまう場合があるからです。
そのため労働者は今の仕事にとどまり、企業もすすんで解雇などをしなくなります。
これを経済学では、「賃金の下方硬直性」とも言います。




それでは、ここで冒頭で紹介した「もしもボックス」の登場です。
この「賃金の下方硬直性」に挑戦してみましょう!



「もしも、労働供給曲線が垂直な状態で、ベーシックインカムが導入されたら?」
と、受話器に吹き込んでみます。



次回のブログでどんな世界になるか体験してみましょう(笑)
(つづく)


ところでベーシックインカムってなに(?_?)






参照ホームページ:
厚生労働省:平成14年版 労働経済の分析
一般労働者における賃金の下方硬直性




2012年10月13日土曜日

自由貿易と数量統制

戦時経済をイメージしてみましょう





10月1日から、NHKの朝の連続ドラマ小説「純と愛」が、はじまってますね。
ですが、当ブログのネタに合わせるために、その時間を1年前に戻してみましょう。
ちょうど今の時期、「カーネーション」をやってました。




大阪・岸和田で洋装店を経営している、ヒロインの小原糸子(尾野真千子さん)は、
戦時中に、お父ちゃん(小林薫さん)から、こんな話を持ち込まれます。


「金糸の入った生地、100反買わへんか?」




ときは、太平洋戦争の真っ最中。戦意高揚のためか、衣料品は配給品となり、
金糸の入った反物の流通・販売も、法律で厳しく統制されていました。




しかし糸子は、反物をすべて買い取り、知恵と工夫で法律スレスレの洋服を作って、
自分の洋品店をますます繁盛させます。




招き猫と商売繁盛




ちなみに、オハラ洋装店は、特にもぐりの商売をやっていたわけではありません。
泉州地方で、地道に堅気の商売をしていました。



なぜそんなに手堅い商売人が、お上の逆鱗に触れるような、ご禁制品に手を出してしまうのでしょうか?
朝ドラの話の筋としてはそれていきますが、当ブログとしては、非常に「おいしいネタ」なので、
そのまま追いかけてみましょう(笑)


数量統制(割当)の開始



前回のブログで、割当という概念が登場しました。
きち村は、ロビ村と仲たがいし、村長の小吉の宣言によって、バナナの消費に、
割当がしかれることになりました。
割当とはすなわち、数量統制のことです。



数量統制を行うことは、需要があった均衡数量より、左の位置(少ない数量)に、
くさびを打ち込むことになります。



数量統制(割当)をしたときのロビ村におけるバナナの需要と供給









これは、売上税を課したときと、同様の費用を強いることになります。
ここでいう費用とは、具体的に次のようなものです。





  • 取引機会の喪失


均衡価格と均衡数量(E点)の位置が、左方(A点・B点)にシフトします。
そのため、需要者の消費者余剰、供給者の生産者余剰が失われます。
経済厚生を歪める」とも言い、市場取引による富の分配機能が失われます。


参考サイト:取引利益と消費者余剰





  • 法律を破ることへのインセンティブと闇取引の横行


均衡価格よりも高く買い取る意思と能力がある人と、
均衡価格よりも安く売れる意思と能力がある人にとって、数量統制は意味をなしません。
かえって、法律を破らせる方に動機づけがされます。



両者は、取引機会を求めるため、公には認められない闇の市場が誕生させます。
結果として、単に法律・ルールを守らせるためだけの、
ムダな社会的コスト(司法コスト・行政コストなど)が発生します。


比較優位、自由貿易(自由交易)重要性



冒頭で申し上げたオハラ洋装店の場合、
戦時中でも「おしゃれを楽しみたい」という、女性(需要者)の要望と、
生地問屋(供給者)の「反物をさばきたい」という、市場(売りと買いの当事者)に
従って行動しただけの話です。



和装美人と商売繁盛




なんだか、社会のルールを守る、守らないの大層な話になってしまいました。
ここで比較優位と自由交易の記事で、登場した引用文を、もう一度引いてみましょう。
自由貿易(自由交易)の有効性を説いたくだりです。



"もし自分の町の住んでいる町でしか作られた製品しか買えない、あるいは、自分の家庭で使うものすべてを自分の親戚以外からは買えないように制限したら、どうなるだろうか。このように自由な貿易を制限していくと、制限そのものが私たちの生活を貧困にさせるという、しごく当然な結論が導かれる"

(副題:リバータリアン政治宣言 ロン・ポール著 副島隆彦著 成甲書房) 


やはり比較優位の概念を生かして、自由貿易(自由交易)を行うことは、大変重要なことなんですね!
> (*゚▽゚)ノ




自由貿易(自由交易)のネタから、国際貿易(輸出・輸入)や、
それに伴う関税輸入割当のネタに、発展させられrそうなので、
また別の機会に書こうと思います。 ☆⌒(*^-゚)ノ~♪see you again♪~ヾ(゚-^*)⌒☆





2012年10月9日火曜日

自由貿易と割当

物資不足の世の中を考えてみましょう




みなさんは、ブツ(財・サービス)が少なくなると、どうなると思いますか?
ブツの供給が過剰になっているような時では、



「やれやれ、競争相手が減って良かった!」とか、「デフレにならんで済むわ」とか、
思われるかもしれません。



ですが、「おちゃらけミクロ経済学」のローカルルールとして、
ブツが、不足しているような経済を考えてみましょう。
毎度、おなじみですが、みなさまの頭の中に、実験室を作っておいてください。


取引をやめるとどうなるか?



かつて、絶海の小島に漂流していた、ロビンソンと吉之助は、
お互いの食料を取引することによって、栄養状態を保ち、
なんとか生き残ることができました。



数年後、小島には、他の漂流者もたどりつき、さらに何世代かのちには、
2つの村ができていました。村の名前は、ロビ村ときち村と言います。




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ご先祖さまたちが、取引をすることによって、サバイバル生活をしてきたせいか、
お互いの村は、それぞれの得意分野の食料を生産し、取引を行って生活しています。




ロビ村の人たちは、マグロの養殖業に特化し、
きち村の人たちは、バナナのプランテーションに特化しています。



ところが、ある日、きち村のプランテーションが、何者かに荒らされ、
きち村の人たちは、ロビ村の人たちを、疑うようになりました。



そうすると、ロビ村の人たちも、きち村の人たちを怪しむようになり、
お互い食料の取引をすることをやめてしまいました。



すると、お互いの村の経済はどうなるでしょうか?
きち村の、バナナの生産、取引、消費を例にとって考えてみましょう。


  • 取引をしていたとき

生産量:4000房
取引量:2000房
消費量:2000房


  • 取引をやめたとき

生産量:1600房
取引量:0房
消費量:1600房




ケンカの前後で、消費用のバナナが、400房減少しています。
マグロを自分たちで捕ってくる必要が生じ、得意なバナナの生産に特化できなくなったためです。
(きち村の人たちは、魚のたんぱく源がどうしても必要だ、ということにしておきましょう。
あくまで思考上の実験です)



割当の開始




というわけで、きち村の村長である小吉は、村人たちにこう呼びかけます。
「ロビ村の連中のせいで、今年から、必要なバナナの量が400房足りなくなり、
1600房になってしもうた。みなには、バナナが平等に行きわたるように。割当を行いたいと思う」



きち村の、元々のバナナについての需要供給は、以下の通りです。



ロビ村におけるバナナの需要と供給




ロビ村におけるバナナの需要と供給



そして、村長の小吉の言葉を、需要供給の図を用いて表すと、こういうことになります。




割当をしたときのロビ村におけるバナナの需要と供給






X軸に対して一本の垂直な線が、くさびのようにかかっています。
これが、小吉の言葉に合った、割当の意味です。
この割当について、経済学的にいうと、「市場の厚生を歪める」とも言います。



割当は、一般的な名詞としても使われますが、経済学用語としては、かなり曲者です。
ですので、次のブログで、もうちょっと突っ込んで考えてみましょう。。。o(゚^ ゚)ウーン
(つづく)










2012年10月5日金曜日

自由貿易の条件

比較優位は経済学における重要概念




5回のシリーズものとして、比較優位の概念について説明してきました。
この概念は、世の中の出来事を分析する経済にとって、非常に重要な概念のひとつです。




管理人が、ふだんミクロ経済学のテキストとして使っている、



  • 「クルーグマンミクロ経済学」
  • 「マンキュー経済学第2版Ⅰミクロ編」


では、最初の方で紹介されています(クルーグマン→P36、マンキュー→P75)。



比較優位のための自由な市場




もっとも、自由な取引ができる「場」がないと、比較優位の考え方は、使えません。
ここでいう「場」というのは、リアルな売り買いの場(穀物市場や株式市場)だけではありません。
ある財やサービスについて、売り買いができると、人々が信じている、
仮想上の概念も含まれます




もし、人々が、ある財やサービスについて、自由に取引ができないと思ってしまうと、
どうなるでしょうか?



おそらく、食料も、衣料品も、住居も、何かも、自分で作って
自給自足の生活をはじめようとします。
肉屋さんが、Tシャツを縫い始め、アパレルメーカーのバイヤーが、電動ノコギリを持ち出し、
住宅メーカーの営業マンが、牧畜業に手を出すことになります。









確かに、今の世の中、それぞれ畑違いのことをやる方は、大勢いらっしゃいます。
でも、それは趣味に限っての話。みんなが、「生きるため」に、真剣に自給自足の生活
はじめ出したら、エライことになります。




なぜなら、人々は得意なことに特化して得られるはずの利益を損なってしまうからです。
ちょうど、こんな感じになります
比較優位と機会費用より引用)



縮小する食料確保量と消費量その1






縮小する食料確保量と消費量その2



縮小する食料確保量と消費量その2



自給自足生活のデメリットとは?



中には、「それでもええやん!」とおっしゃる方が、いらっしゃるかも知れません。
ですが、一度、自由貿易の恩恵に浴して、その後、自給自足の生活に移そうとなると、
たくさんのデメリットが、発生します!




経済学風に需要と供給の法則にもとづいて説明すると、
それぞれの曲線に、くさびが一本、打ちこまれることになります。
そうすると、価格と数量の均衡が取れなくなります。



文章のみで説明すると、分かりにくいですね???r(・x・。)???
次回は、当ブログ名物の作図で、表してみましょう。
(つづく)





【比較優位のための関連エントリ】
比較優位の含意
比較優位と機会費用
比較優位と取引利益
比較優位と取引
比較優位と自由貿易




2012年10月3日水曜日

比較優位の含意

比較優位のポイントは3つ




前回のブログで、絶対優位と比較優位の考えについてご説明いたしました。
今回は、後者の比較優位の含意を考えてみましょう。ポイントは3つです。
1つずつ解説していきましょう。



比較優位と機会費用を考えてみよう


1つ目のポイント



  • 「2人が、得意分野の生産に特化すれば、経済の総生産が増加する」

これは、当ブログの愛読者(?)の方であれば、もうすでにご存じでしょう(笑)
こちらは、前回前々回のブログをご参考ください。



2つ目のポイント



  • 「それぞれが、2つの財について、異なる機会費用を持つ限り、誰でも何かの財について、比較優位をもち、何かの財について、比較劣位をもつ」


抽象的な言葉を並べましたが、
要は、算数の時間で習った、「分数の逆数」を思い出してください。
ロビンソン、吉之助ともに、魚とバナナの機会費用は、ちょうど逆数の関係にあります。




【2人の機会費用の交換レート】


ロビンソン:バナナ3/4房⇔魚4/3匹
吉之助:バナナ2房⇔魚1/2匹



比較優位は逆数の関係


比較優位は逆数の関係




ロビンソンは、魚捕りについては、「名人」だといえますが、バナナの収穫は、「下手くそ」です。
逆に、吉之助は、魚捕りについてについては、「下手くそ」ですが、バナナの収穫は、「名人」です。
両者ともに捕まえた魚の数や、収穫したバナナの本数そのものを、
比較しているわけではありません。





3つ目のポイント



  • 「比較優位の概念は、漂流者だけでなく、国際間の交易にも拡張できる」



比較優位の概念が、絶海の小島のみで適用できるアイデアであれば、
単なる空想上のアイデアです。しかし、実際には国際間での、
貿易の原因と効果をかんがえるための、分析ツールとなります。





ちなみに、3つ目の含意の中で、管理人が強調したい部分は、3番目のポイントです。
当ブログで紹介したアダム・スミスが、「アイデア」を考え、
デービット・リカードという人物が、自分の国会議員としての活動に活かしました。









そういうわけなんで、今度は、比較優位の前提となる、
自由貿易についてブログを書いてみることにしようっと。
(「比較優位」シリーズ終わり)




2012年10月1日月曜日

比較優位と機会費用

比較優位をグラフで表してみよう




絶海の小島の漂流してきた2人が、魚捕りやバナナ集めについて、
それぞれの得意分野に特化して、取引をすると利益が生じます前回のブログ)。
前回は、で説明しましたが、今回は関数のグラフとして表現してみましょう。






グラフの違いをよく見てみよう!




取引後のロビンソンの食料確保量と消費量



取引後のロビンソンの食料確保量と消費量



取引後の拡張した吉之助の食料確保量と消費量


取引後の拡張した吉之助の食料確保量と消費量



2人とも食料確保量と消費量が右側に拡張しています。
これを「取引による利益」と丸めた説明で終えることも可能です。
しかし、それでは当ブログを書いている管理人自身が、モヤモヤ感を残してしまいます。


絶対優位と比較優位



ここで、絶対優位比較優位の違いについて考えてみましょう。



絶対優位

(単なる数量勝負なら コチラ !)


◆ロビンソン
バナナの収穫も魚捕りも、吉之助よりたくさんの量を確保できる。


◆吉之助
バナナの収穫も魚捕りも、ロビンソンよ少ない量しか確保できない。


●魚捕りについて
ロビンソンの最大確保量は、80匹。吉之助の最大確保量は40匹。


●バナナの収穫について
ロビンソンの最大確保量は、60房。吉之助の最大確保量は40房。



【絶対優位による結論】
ロビンソンは、バナナの収穫も魚捕りも、「絶対優位」にある。
吉之助は、バナナの収穫も魚捕りも、「絶対劣位」にある。



比較優位

(取引利益を得るならコチラ!)


◆ロビンソン
魚1匹を捕まえるために、バナナ3/4房をあきらめなければ(支払わなければ)ならない。
バナナ1房を収穫するために、魚を4/3匹あきらめなければ(支払わなければ)ならない。


◆吉之助
魚1匹を捕まえるために、バナナ2房を(支払わなければ)ならない。
バナナ1房を収穫するために、魚を1/2匹あきらめなければ(支払わなければ)ならない。


●魚捕りについて
魚1匹を得るために、ロビンソンの方が費用効果が良い。
あきらめなければならないバナナは3/4房で、吉之助の2房と比べて、費用が少なく済む。


●バナナの収穫について
バナナ1房を得るために、吉之助の方が費用効果が良い。
あきらめなければならない魚は1/2匹で、ロビンソンの4/3匹と比べて、費用が少なく済む。



【比較優位による結論】
ロビンソンは、魚捕りについて、吉之助と比べ、比較優位にある。
吉之助は、バナナの収穫について、ロビンソンと比べて、比較優位にある。



比較優位と機会費用について




比較優位の考え方を用いるとき、機会費用という概念が登場します。
これは、次の考え方にもとづいています。




「一方の食料を、一定量確保するために、もう一方の食料確保をどれぐらい
あきらめなけれればいけないか」





「比較優位」では、「機会費用」による費用効果を比較し、
ある一方の財の生産するために、犠牲にするもう一方の財をより少なくできることを
「優れている」と表現します。





(比較優位~バナナと魚の機会費用)






このように、両者がある財について、
「比較優位をもつとき、取引による利益が発生する」と言います。
(つづく)