おちゃらけミクロ経済学: 1月 2014

2014年1月31日金曜日

企業と広告 独占的競争と完全競争の比較 その2

広告を出す企業と広告を出さない企業の違い




さて、前回の記事では、以下のコーラのCM(2本)と牛乳のCM(1本)では、
ミクロ経済学的に何が違うのか?という問いかけを行ってみました。







先に結論を言ってしまうと、こんなところです。


コーラのCMはそれぞれ民間企業が自社の費用として独自に作成している。
一方牛乳のCMは、社団法人中央酪農会議という酪農家の共同組織が作成して、
個々の酪農家が作成しているわけではない。つまり広告を出す主体が異なる。




Milk-Tasting Time / Joe Shlabotnik





広告への態度は市場構造の違いから生まれる





それでは、なぜこんな差が生じるのでしょうか?
それはコーラと牛乳の市場構造の違いから生じるためです。


コーラの市場構造(独占的競争の長期均衡)






牛乳の市場構造(完全競争の長期均衡)







2つの図で見るべきポイントは、限界収入と限界費用が交わる点です。
独占的競争市場であろうと完全競争市場であろうと、
生産量(販売量)は、限界収入と限界費用が交わる点で決まり、
価格はその生産量(販売量)によって決まります。




牛乳の広告は共同組織だけがまとめて出す





ただし独占的競争市場では、販売価格(需要曲線)は、
すでに限界収入を上回っているます。



提示した価格で追加的に販売できると、限界費用を上回る収入の増加が得られます。
このため、独占的競争市場にある企業は、その収入の増加を見越して積極的に
広告を出す
ことになります。



一方で完全競争市場では、販売価格は限界収入と等しく、限界費用と同じであるため
生産者が追加的に多く販売しても収入の増加は見込めません。
このため、完全競争市場にある企業は、広告を出そうとはしません。



それでも牛乳のCMは出ているじゃないかと、思われる方もいるでしょう。
しかし、これは特定の酪農家の牛乳を売るためではありません。



牛乳全体の消費底上げを狙った産業全体のCMであって、
一般社団法人中央酪農会議という共同組織としてCMを出しています。


(「企業が広告を出す理由 独占的競争と完全競争の比較 」シリーズ終わり)







2014年1月30日木曜日

企業と広告 独占的競争と完全競争の比較 その1

コーラと牛乳のCMは何が違うのか?


  • 街を歩けば看板が
  • テレビをつければCMが
  • Googleで検索すればキーワード広告が


私たちが日常生活をしていて、広告を見かけない日は、ほとんどありません。



あまりに広告があふれかえってしまっているため、
かえって広告の違いが、分かりにくくなってしまいます。



しかし、次に示すコーラCM(2本)と牛乳のCM(1本)では、
ミクロ経済学的に決定的な違いが存在します。


それはどこでしょうか?




コーラ2本と牛乳1本のCMについて



【コカ・コーラ ゼロ】 EXILE TVCM「Endless Crave」篇 60秒 Coca-Cola Zero 2013 TVCF





いいなCM pepsi NEX カバーシリーズ





3篇 牛乳に相談だ CM 2005-2007年 川島海荷 「キス」「チョーク」「ライオン」






ヒントとしては、独占的競争市場と完全競争市場の市場構造の違いがあげられます。
答えは次回のブログで!



Milk and cooky / Salim Virji




 (つづく)


2014年1月17日金曜日

「フツーの会社」がそこそこ儲かる理由 独占的競争市場の均衡 その2

独占的競争企業→独占利潤の出ない独占企業



前回独占的競争市場において、長期的に自由参入と自由退出
発生することを説明しました。図で表すとこんな感じです。



需要曲線が右シフト(利潤が多い場合)






需要曲線が左シフト(利潤が少ない場合)






図の需要曲線と限界収入が動いているのは、その独占的競争市場において、


  • 利潤が得られるとき→参入企業が増える→曲線が右シフトする
  • 損失を被っているとき→既存の企業が退出する→曲線が左シフトする


という理由があるためです。





Tsukiji Market / blprnt_van





利潤や損失が発生していても長期では均衡する






市場全体の利潤や損失で需要曲線や限界収入が、左右にシフトするわけですが、
最終的には、需要曲線が平均総費用のある一点に接することになります。



独占的競争市場の均衡









この状態が独占的競争市場における、均衡となります。






「そこそこ儲かる」の意味





この様子は、「独占利潤の出ない独占状態」とも呼ばれます。
確かに販売すればするほど、販売するほど、販売価格(需要曲線)と限界収入の



乖離がすすむため、独占利潤を得ているように見えます。
しかし、その販売価格は平均総費用と等しいため、利潤は発生しません。



もっとも、販売価格と平均総費用が出ていないからといって、
個別の企業で会計上の粗利益や営業利益が出ていないかといえば、
そうではありません。




ここでいう利潤とは、細かくいうと、超過利潤のことです。
使い方は、企業によって様々ですが
従業員に通常より多くの賃金を支払ったり、株主によりたくさんの
配当を行うための原資となったりするものです。



独占市場における企業が「儲かっている」ように見えるのは、
こういった超過利潤が発生するためです。



独占的競争市場が、「そこそこ儲けることができる」のは、
独占利潤は発生しないものの、均衡によって、企業が市場に出入りするためです。





「「フツーの会社」がそこそこ儲かる理由 独占的競争市場の均衡」シリーズ終わり)






2014年1月16日木曜日

「フツーの会社」がそこそこ儲かる理由 独占的競争市場の均衡 その1

均衡の考え方から独占的競争市場を考える




さて、経済学の重要な概念の1つに均衡というものがあります。


【均衡】


何か違うことをしてみても誰も自分の暮らしを改善できなくなった状況。
または需要と供給が等しくなった状態。


この概念に基づいて、独占的競争企業の短期利潤を見てみると、
均衡していない状態になります。


利潤を得ている独占的競争企業





損失を被っている独占的競争企業





ビジネスチャンス!が豊富な市場





均衡の含意は、独占的競争企業は短期的にとって、


  • 利潤が得ている
  • 損失を被っている


という状態になっても、自分の「暮らし向き」が変わる可能性があります。
商売っ気まんまんで、ポジティブな言い方をすると、
「ビジネスチャンスがある!」ということになりましょうか(笑)。




01 (161) / Victor1558





自由参入と自由退出がビジネスのカギ




で、その「ビジネスチャンスがある!」と言う状態を図で表すとこうなります。
これは独占的競争市場の性質の1つである、長期の自由参入と自由退出
特徴を捉えています。費用に関する曲線は、省略しています。



需要曲線が右シフト(利潤が多い場合)





需要曲線が左シフト(利潤が少ない場合)





(つづく)







2014年1月10日金曜日

独占的競争企業の短期利潤 その2

「フツーの会社」のもうけの構造



世の中のいわゆる「フツーの会社」が、「なんぼ儲かりまっか?」と聞かれて、
利潤を確定させようと思えば、ざっくりと次の3つの作業が必要となります。


  1. 価格を決める
  2. 販売(生産)数量を決める
  3. 費用を決めて収入と費用の差分を取る


価格と数量の決定は、最適生産量のルールというものがありますので
それを見て決定します。限界収入と限界費用が交差するところで決まっちゃいます。
ここまでは前回も説明しましたが、問題は費用をどう取るか?ということです。




lr-processed-0399 / itsmeritesh





世間一般でいうコストとは平均総費用のこと





このときの費用とは、平均総費用というのものを取ります。
限界費用とごっちゃになりそうですが、両者はまったく違います。
(その辺の詳しいところはここらで説明)



その平均総費用曲線を記入すれば、下記の図のようになります。



利潤を得ている独占的競争企業





なんかヘンテコなU字型の曲線が登場していますね。
でも、需要曲線(価格)の方が、費用よりも上回っているので、
これで利潤が出ている状態です。
(平均総費用曲線がヘンテコなU字型の曲線になる理由はコチラ)




コストが収入を上回れば損失(当たり前の話)





当然、需要曲線(価格)よりも費用の方が上回ってしまうと
損失が生じます。その損失が出ている状態を、表すとこの図の通りになります↓



損失を被っている独占的競争企業





’「独占的競争市場の短期利潤」シリーズ終わり)





2014年1月9日木曜日

独占的競争企業の短期利潤 その1

商売の豆知識 最適生産量ルールと平均総費用




前回のシリーズでは、こんな感じ↓で独占的競争市場
需要曲線と限界収入曲線を説明しました。



独占的競争市場の需要曲線と限界収入





※青色が需要曲線で水色が限界収入曲線



需要曲線と限界収入の差が、独占的競争市場の
独占利潤が発生する理由ですが、これだけでは利潤は確定できません。



なぜなら、この図には費用曲線が書かれておらず、
どれぐらい生産するのか、分からないからです。
それにしても、いかほど作れば良いのでしょうかね~?




Pounds Payment / .v1ctor Casale.





最適生産量のルール 限界収入= 限界費用





いかほど作れば良いかという問いには、完全競争市場の最適生産量のルール
そのまま当てはめれば良いだけです。



  • 限界収入 = 限界費用



図で言えばこのように、限界収入曲線MRと限界費用曲線MCが交差する生産量で、
利潤最大化生産量とも言います。


マンツーマントレーニングの最適数量






「儲かりまっか?」→平均総費用はいくらかかりますか?





これで「いかほど作るべきか?」は決定しました。
で、あとはそんだけつくったら「なんぼ儲かりまっか?」という話です。



「なんぼ儲かりまっか?」とはすなわち利潤のことですが、
これは限界でもって差し引きするのではなく、そのときの平均総費用で計算します。



(つづく)







2014年1月4日土曜日

「フツーの企業」はもうかるか? 独占的競争の収入 その2

それなりにもうかるけど超過利潤は出ないよ




前回(リンク)独占的競争市場に、「フツーの会社」が地道に汗臭い作業を経て、
製品差別化をする理由について、図を描いて、他の市場構造と比較することで
求めようとしました。



完全競争市場の需要曲線と限界収入





独占市場の需要曲線と限界収入





独占的競争市場の需要曲線と限界収入







これらを見ると、見た目の感じとして、次のような疑問が思いつきますね~。




  1. 完全競争市場と、独占市場・独占的競争市場は線の傾きからして違う!
  2. 独占市場と独占的競争市場は、同一なのか?




完全競争市場と、独占市場・独占的競争市場は線の傾きからして違う!





まあ、これは独占市場・独占的競争市場が、どうやらこうやらというよりは、
完全競争市場のお約束ごとですね。



  • 販売価格(需要曲線)と限界収入は常に等しい
  • いくら生産しようが、市場価格(限界収入)は全く同じ




市場で売れる価格と、もう一個余計に売って追加的に得られる収入の
差がゼロなので、利潤は全く出ません。
(といっても会計的に粗利益や営業利益が出ないというわけではない)



それに対して、独占市場・独占的競争市場は、作れば作るほど、
販売価格と限界収入の差が広くなるのでそれだけ利潤も出て、
「おいしい商売」とも言えます。




独占市場と独占的競争市場は、同一なのか?





う~ん。これらを見た限り、両者はおんなじですね。
ただし、「短期的には」という条件が付きです。
「長期的には」独占的競争市場では、販売価格(需要曲線)と限界収入が、
移動するので、両者は同一ではありません。



需要曲線が右シフト(利潤が多い場合)







需要曲線が左シフト(利潤が少ない場合)









独占的市場では、独占市場のように参入企業が、固定されているわけではありません。
長期的に見れば、利潤の多寡によって、企業が参入したり、退出したりするので、
独占的競争市場の企業は、「独占利潤のない独占企業」のようになります。



で、タイトルにある「フツーの企業はもうかるか?」ということです。
まあ、独占利潤が出てウハウハもうかるということはないと思いますが、
やり方次第で、粗利や営業利益は、それなりに出ることは、
可能なんではないでしょうか?そんな結論になります。



(『フツーの企業」はもうかるか? 独占的競争の利潤』シリーズおわり)
















2014年1月3日金曜日

「フツーの企業」はもうかるか? 独占的競争の利潤 その1

じぶんとこで好きな値段を決めるためには…




今まで(リンク)、独占的競争市場では、
製品差別化が重要なポイントですよ~」と述べてきました。
それができれば、企業はある程度自由に価格を決められるからです。



とはいっても、実際、現実の世界で製品差別化をして、
よその企業より高い価格で販売をしようと思えば、



  • 営業
  • 広告・宣伝
  • マーケティング
  • 品質改善
  • SEO検索


…etc


など、消費者に認めてもらうための、ネバーエンディングな作業が必要になります。
世の中のたいがいの会社(企業)は、これらを無限に組み合わせて、
事業活動を行っているわけです。





Endless Candy / *PaysImaginaire*






需要曲線で3つの市場を比較





と、「フツーの会社」が地道に汗臭い作業を経て、製品差別化をする理由について、
文章で説明していてもラチがあかないよう気がします。



他の市場における需要曲線と比較してみましょう。
比較の対象は、完全競争市場と独占市場です。



完全競争市場の需要曲線と限界収入





独占市場の需要曲線と限界収入





独占的競争市場の需要曲線と限界収入







似ているところもあるし、全然違うところもあるし






どうでしょうか?見た目の感じとして
次のようなことを感じられたのではないでしょうか?



  1. 完全競争市場と、独占市場・独占的競争市場は線の傾きからして違う!
  2. 独占市場と独占的競争市場は、同一なのか?



次回ではこれらの疑問について詳しく考察していきましょう。


(つづく)



























2014年1月2日木曜日

独占的競争でも製品差別化 その2

製品差別化で消費者の便益が向上



前回、独占的競争の製品差別化ということで、
コンビニ大手3社のコーポレートカラーを比較してみました。




これらはWebサイトですが、コンビニが密集している地域でも
それぞれが見分けられるよう、色の組み合わせが異なっていますね。
こういうのが、製品差別化と言います。





東山のセブンイレブン / casek





コンビニカフェに見る製品差別化





製品差別化についてもう少し詳しく定義すると、次の3つの形態が存在します。



  1. スタイルやタイプの差別化
  2. 立地の差別化
  3. 質の差別化



1.はローソンなんかが顕著ですね。コンビニは、365日24時間を売りをしている
はずなのに、「100円均一」をテーマにしてます。「100円でこんなものが買えるコンビニ」
という多様性を消費者に訴えかけています。



2.はファミマのエキナカ事業で見られます。清涼飲料水やおにぎり、惣菜パンなど
扱っている商品そのものはほとんど同じです。
通勤の途中などで買えるエキナカのコンビニには、住宅地に出店する店とはまたことなる
利便性を感じさせてくれます。


3.もローソンのマチカフェを見ていると分かります。
セブンイレブンのコーヒーが100円なのに対して、ローソンでは高級路線で
180円にしているらしいです。
(すんません。どっちもまだ飲んだことがないので、コーヒー自体の説明はしません)



このように多様な質の製品が手に入るようになることは、
消費者は大変、有益です。



多様な質の製品が手に入るようになり、
不必要に高品質な製品を高い値段で買わされたり、
不満の残る低品質の製品で、我慢せざるを得ないことは、少なくなります




(「独占的競争でも製品差別化」シリーズ終わり)





2014年1月1日水曜日

独占的競争でも製品差別化 その1

製品差別化がより重要な世界



以前、こんな記事を書きました。




寡占市場における企業でも、「製品差別化は大切なことだ!」
説明した記事ですが、今回のテーマである、独占的競争ではより重要なことです。





lawson / Yuya Tamai





似たような業界の製品差別化とは?




都心郊外の駅前なんかを出歩くと、大体どこにでも、
同じような業態の店舗が争っていたりします。



  • コンビニ
  • ドラッグストア
  • 居酒屋チェーン店



これらの店は、大体同じようなものを扱っていますが、
いったい何で差をつけているんでしょうか?



色の違いで製品差別化




例えば、コンビニ。大手3社のWebサイトで基調とする
コーポレートカラーを見てみましょう





これらは、基本的に365日24時間営業を行う同じような小売業ですが、
すでに消費者の心の中で、差別化されています。



各コンビニ企業は、「うちはあそことは違う」というイメージを
消費者に印象付けるため、Webサイトでも各店舗の看板でも、
それぞれ違う色を基調にしています。



(つづく)