おちゃらけミクロ経済学: 9月 2013

2013年9月27日金曜日

経済学と政治哲学 (おまけ)

政治哲学を表にまとめてみたり、その他いろいろ



前回のブログで、公平性の考え方として3つの考え方をあげました。


  • 功利主義
  • 自由主義(リベラリズム)
  • 自由至上主義(リバタリアニズム)



もうちょっと簡潔にまとめてみたいと思い、Googleスプレッドシートを使って
表にしておきました。関心のある方は、ご参考までにどうぞ。



政治哲学の比較








補足(自由至上主義について)





こうして表にしてみると、「自由至上主義」は放置プレイのように見えて、
最後は「野垂れ死」にするような感じもしないではないなぁ(苦笑)



確かに社会保障という観点だけで見れば、そのように見えるかもしれませんね。
しかし、自由至上主義には、一種の「気楽さ」があります。



ここでいう「気楽さ」とは、人びとが自分の持っているモノや得意なコトを持ち寄って、
それを取引に使って生活ができるということです。



詐欺・窃盗などの法や治安に対するコストさえ、皆で支払えば、
誰でも商売がはじめられるという世界を想定しています。





Bazaar Nagadeepa / lakpuratravels





図で表すと、このように表され、あらゆる取引利益が、
生産者と消費者に恩恵をもたらします。これは、いわゆる市場取引というものです。
分かりやすいイメージで言うなら、「バザー」のようなもんでしょうか。







まあ、そのへんの「気楽さ」は、下の【参考文献】にもかかれたりしますので、
ご興味のある方はどうぞ(笑)




(「経済学と政治哲学 シリーズ」終わり)



【参考文献】


ジョン・マクミラン 市場を創る―バザールからネット取引まで (叢書“制度を考える”) NTT出版









2013年9月20日金曜日

経済学と政治哲学 その2

功利主義と自由主義と自由至上主義



経済活動で必要な資源はどのように分配するか?そのためには
一定の基準が必要です。その基準となるのが、経済学では公平性と言います。



といっても公平性について明確な定義がありません。、
もっぱらどういう風にパイを分けるかは、政治哲学の問題となります。
マンキュー経済学〈1〉ミクロ編にもとづいて、主に3つの考え方を紹介します。



公平性とか政治哲学とか書くと、何だかとっても遠い世界のことを
語っているように感じるかもしれませんが、
サラリーマンの方などは、毎月もらう給料の手取り収入と密接に関係します。




アップルパイなう! / chidorian





功利主義とは?



政府は社会におけるすべての人の総効用を最大化する政策を選択すべき。



【考え方】
貧しい人が政府から受け取る1万円分の効用は、
金持ちの人が税金として取られる1万円分の効用より大きい。
従って所得の再分配をすると社会全体の総効用は増加する(限界効用逓減の法則)


【政策の具体例】
所得税の累進課税制度、厚生年金の標準報酬月額制度


【デメリット】
所得分布が低い人ほど、または所得分布が高い人ほど
一生懸命働くインセンティブがなくなる恐れがある。




自由主義(リベラリズム)とは?





政府は、生まれる前の原初状態の人に評価されるように
公正であるとみなされる政策を選択すべき。


【考え方】
政府は社会において最も悪い状況にある人の福祉を
最大化するべきであるという考え方(マクシミン原則)


【政策の具体例】
社会保険制度全般(国民年金保険・厚生年金保険・健康保険等)


【デメリット】
原初状態の人はどの所得階層に生まれつくかが分からないので、
所得再分配の必要のない階層に所得再分配を行ってしまう




自由至上主義(リバタリアニズム)





政府の仕事は、治安活や自由な契約活動の保障であり、
所得再分配に介入すべきでない。


【考え方】
自発的な取引によって生じた利益は全て当事者の間で分け合うべき。
「過程」が公正であれば、結果で生じた不平等や格差は考慮しない(完全競争主義)。


【政策の具体例】
特になし(政府は何もしないことが最良)


【デメリット】
何が最低限のセーフティネットになるか個別に議論しなければならない。
(ベーシックインカム・教育のバウチャー制度など)



グレゴリー・N・マンキュー マンキュー経済学〈1〉ミクロ編 東洋経済新報社





















2013年9月19日木曜日

経済学と政治哲学 その1

所得の不平等を解消するための考え方




前回の公平性と効用可能性フロンティアでは、
希少な資源の配分について、


  • 「もっと平等主義的にしようとか」
  • 「いや成果配分にした方が良い」


などと、公平性について、考えてみました。資源を分配しようとしても、
「何が正しいか?」という基準がないため、経済学で良く登場する効率性だけでは、
分配することができないからです。







資源を「正しく」分配しようとすれば、効率性のような
実証的な概念よりも、公平性といわれる規範的な概念が必要となります。





ロールズの正議論まで山積みされてる時代。 / kayakaya





所得の不平等を解消する3つの考え方





もっとも、この公平性という概念は非常にあいまいな概念で、ミクロ経済学では
効率性のように明確な定義はされていません。



公平性はミクロ経済学というよりは、政治哲学の問題となります。
それぞれどんな政治哲学があるかと言えば、主に下記の3つとなります。


  1. 功利主義
  2. 自由主義(リベラリズム)
  3. 自由至上主義(リバタリアニズム)



3つの考え方のうちのどれが良いか?





次回のブログでは、分配に関する3つの考え方について
マンキュー経済学〈1〉ミクロ編にもとづいて解説していきましょう。



管理人は公平性政治哲学について、マンキューの本を何回も読み返しましたが、
それぞれ一長一短があります。所得の不平等を解消するための方法は、
一筋縄ではいかないようです。




【参考文献】


グレゴリー・N・マンキュー マンキュー経済学〈1〉ミクロ編 東洋経済新報社









2013年9月13日金曜日

公平性と効用可能性フロンティア その2

経済学ではなく政治哲学の問題



限りある資源を有効に活用し、異なる個人やグループの間で
最大限の満足を得ようとすれば、効用可能性フロンティア
様々な組み合わせが存在します。


土地配分の公正性






効用可能性フロンティア上にある、資源配分の組み合わせは、
どの組み合わせ(点)をもってしても、効率的でありますが、
どれが公平であるかは、分かりません。



  • A点→南側の住民に重点配。南の住民は満足だろうが北の住民は不満足
  • B点→北側の住民に重点配。北の住民は満足だろうが南の住民は不満足




公平性は経済学では測れない





A点とB点のどちらの組み合わせが「正しい」かは、
ミクロ経済学でいうところの公平性の概念によって決められます。



といっても公平性とは、人それぞれの価値観によって分かれるものであり、
効率性のように明確が基準(リンク)が、あるわけではありません。経済学だけでは、


  • 「もっと平等主義的にしようとか」
  • 「いや成果配分にした方が良い」


という問いかけに答えることはできません。これらは政治哲学の問題となるでしょう。





給与明細書 / chiaki0808





政治哲学と給与明細書の意外な関係





当ブログは、「ミクロ経済学」と名前をつけていますので、
政治哲学に深く立ち入って、良し悪しを論じることはしません。



ただ、資源の分配に関する考え方をザックリ理解しておくと、
次のような所得再配分に関する問題に詳しくなれると思いますので、
次回のシリーズから、政治哲学に関する概要を説明していきましょう。



  • 所得税の累進課税
  • 年金
  • 医療保険



よ~く見たら、これらはサラリーマンの手取り収入に関係のあるもんばかりですね~。
給与明細書の控除項目と合わせて読んでみましょう(笑)



(「公平性と効用可能性フロンティア」シリーズ終わり)







2013年9月12日木曜日

公平性と効用可能性フロンティア その1

追求するのは効率性だけではありません



日常の会話で、よく使われる言葉に公平性というものがあります。


  • 「このケーキは10人に公平に分けよう」
  • 「草むしりにの受け持ち区域の広さは各人が公平になるようにする」


ですが、この公平性という言葉は、ミクロ経済学の教科書でもよく登場し、
効率性と対をなす概念です。




効率性
Cutting-Birthday-Cake_Chocolate-Vanilla-Cream__25148 / Public Domain Photos






効率性⇔公平性





効率性とは、計画経済によく見られる「●●●中央委員会」とか、「△△△整備機構」のような
中央集権化された組織によらずとも、資源の配分について、
社会のすみずみにまで、希少な資源が行きわたることを指します。



しかしながら、その効率性とは方法を示すものであって、
目標そのものを示すことではありません。



例えば、土地の所有権に関して南側の住人と北側の住人に
配分する問題を考えてみましょう。



土地の広さには有限性がありますが、南側の住人と北側の住人に
配分する面積の組み合わせは、必ずしも一つとは限らず無数に存在します。
従って、この南北住民への土地配分は、次の作図のように表現できます。



南北住民への土地配分の組み合わせ






効用可能性フロンティアとは





この作図は、効用可能性フロンティアと呼ばれるものです。
経済の資源を一定なものとして、あるグループがどれだけ満足を得ることが
可能かを表現しています。この効用可能性フロンティア上では、どの点も効率的です。



しかし、経済の効率性を基準にしているだけでは、組み合わせは
無数に存在し、どれが「正しい」組み合わせであるかは、全く分かりません。
そこで登場するのが公平性という概念です。



土地配分の公正性












2013年9月6日金曜日

効率性と一般均衡(おまけ)

価格機能がマヒしたら経済は非効率になるよ!



経済が効率的であるためには、




についてそれぞれ効率的であることが必要です。
これらは効率性の基準の前提となっているのが、経済シグナルとしての価格です。



上記にあげたブログでは、価格が機能して、
経済の効率性が当然の如く達成されることを述べていますが、
残念にして機能不全に陥ることもあります。


ではどんなときに、経済シグナルとしての価格が機能しなくなるのでしょうか?




神戸税関
神戸税関 / junicorn





価格がマヒするときその1~割当・消費税(売上税)・関税





価格が機能しなくなる1つめのパターンは、ある特定の人間や団体が
恣意的に資源を囲もうとする場合です。箇条書きするとこんな感じ。


  1. 統制経済における割当制度
  2. 取引における消費税または売上税制度
  3. 貿易における関税制度

このうち、


1番目の統制経済における割当制度
2番目の取引における消費税または売上税制度


は、当ブログでも取り上げたことがありますので
良ければリンクをクリックしてください。



ザックリとしことを言うと、これらの制度は、本来の価格よりも高いところで
取引を終わらせてしまうため、財・サービスの供給不足を招きます。
この財・サービスの供給不足が、市場に非効率性をもたらします。




価格がマヒするときその1~共有資源・人為的希少財・公共財





価格が機能しなくなる2つめのパターンは、そもそもその財やサービスが、
市場での取引に向いていないために発生するものです。



ここまで財・サービスについて何でも一括りに説明してきましたが、
実は、消費の排除可能性消費の競合性などを基準に4種類に分けられます。



4つのタイプの財








このうち市場が効率的に供給できるのは、私的財と呼ばれるタイプのものだけです。
あとは、政府の介入などなどが必要だったりします。



このことを説明しだすと記事の1個や2個では済まなくなりそうなので、
また別個に特集を設けて書くことにします。



(「産出水準の効率性」シリーズ終わり)