おちゃらけミクロ経済学: 8月 2013

2013年8月30日金曜日

産出水準の効率性 その3

財・サービス市場の変化→生産要素の変化



さて、前回産出水準の効率性を理解するために、
このような経済循環フロー図を作図してみました。


経済循環フロー図





経済循環フロー図とは、経済で行われる取引を、円の周りでフローとして流す
モデルのことを言います。財・サービスの市場では、家計企業から財を買い、
企業への貨幣のフロー(流れ)を生み出します。



一方、企業が需要市場で家計から生産要素を買い付けるとき、
貨幣は家計に戻っていきます。



循環
circuit ride / spinster cardigan





経済循環フロー図に「朝ごはんの市場」をはめてみる





産出水準の効率性 その1であげたように、「朝ごはんのための主食市場」を
この経済循環フロー図に当てはめてみましょう。



「朝ごはんのための主食市場」では、米と小麦しか存在せず、
労働が唯一の生産要素となる仮想的な経済です。



この仮想的な経済を考えることで、財・サービス市場が、生産要素市場を
通じてどうつながっているかを理解しやすくなります。



経済循環フロー図~「朝ごはんのための主食市場」







経済循環フローの枠組みで消費者の好みに対応





例えば、人びとの好みが変化して米の需要が、小麦の需要よりも相対的に増加すると、
米の需要を右にシフトさせ、小麦の需要を左にシフトさせることになります。



その結果、米を増産させるため、米作の均衡雇用量を増加させて、
小麦の畑作部門での均衡雇用量を減少させることになります。



経済循環フロー図~「朝ごはんのための主食市場(米の需要が増加した場合)」






このような経済循環フローの枠組みで、価格が経済シグナルとして
適切に働く完全競争市場において、消費者が好む財の組み合わせが、
生産されるようになります。














2013年8月23日金曜日

産出水準の効率性 その2

経済循環フロー図と産出水準の効率性




経済全体において人びとの好みが変化し、
産出水準の効率性が発揮されると、生産の組み合わせも変わります。



もちろん、生産の組み合わせが変化するのは、経済シグナルとしての価格
財を自由に処分できる所有権が、確立していることが必要となります





Bread / rprata





経済循環フロー図の概要





価格所有権だけで、ずいぶん都合よく変化するようにも見えますが、
価格所有権に加えて経済循環フロー図を理解することで、
人びとの好みが生産の組み合わせに反映されるのか、分かりやすくなります。



経済循環フロー図






経済循環フロー図~家計と企業





経済循環フロー図とは、経済で行われる取引を円の周りでフローとして流す
モデルのことを言います。財・サービスの市場では、家計企業から財を買い、
企業への貨幣のフロー(流れ)を生み出します。



一方、企業が需要市場で家計から生産要素を買い付けるとき、
貨幣は家計に戻っていきます。


(つづく)







2013年8月22日木曜日

産出水準の効率性 その1

人びとの好みと生産のバランスについて





これら3つのブログでは、経済全体が効率的であるための基準を述べました。
経済全体が効率的であるためには、次の3つの基準が必要です。


  1. 消費について効率的
  2. 生産について効率的
  3. 産出水準について効率的


このうち3つめの産出水準について効率的というのは、
少し説明を要するので、少しスペースを割いて考えていきましょう。




i-photo 2012年最後のパンを焼く / midorisyu





産出水準の効率性~意味と例





【意味】
他の人びとの状態を悪くすることなく、ある人の状態が良くなるような異なる生産の
組み合わせが存在しない状態のこと


【例】
「朝ごはんのための主食市場」



当初、人びとは週7日のうち、5日が米食で、2日がパン食だったため、
以下のような産出水準でした。



米食は週5日でパン食は週2日の産出水準







ところが、人びとの好みが変化し、週7日のうち、米食は週2日、パン食は週5日
となり、以下のような産出水準に変化しました。



米食は週2日でパン食は週5日の産出水準







A点もB点も生産については効率的です。しかし人々の好みが変化した後、
元のA点では、産出水準では非効率であると言えます。




価格や所有権の機能が必要





「朝ごはんのための主食市場」では、人びとの好みが変化したからという理由で、
生産の組み合わせが変化しました。都合良く、変化しているように見えますが、



  • 経済シグナルとしての価格
  • 所有権の確立



など完全競争市場に必要な条件が確立していると、
産出水準に関して、効率的な状態が発生します。


(つづく)









2013年8月9日金曜日

効率性と一般均衡 その3

生産の効率性について



前々回のブログ(リンク)では、効率的な個別市場が均衡していることを拡張して、
経済全体が一般均衡することを述べました。経済全体で一般均衡に至るためには、
3つの基準を満たす必要があります。


  1. 消費について効率的
  2. 生産について効率的
  3. 産出について効率的


今回は、このうち生産について効率的であることを考えていきましょう。





田んぼ / contri





生産について効率的~意味と例





【意味】
他の財の生産量を減らすことなく、ある財をより多く生産することができないときのこと。


【例】
「生産要素として田んぼと小麦畑だけを扱う土地の市場」


(条件)
1.事前にわざと米作農家には小麦畑を多く配分し、小麦農家には田んぼを多く配分する
2.この市場は完全競争市場であり所有権と経済シグナルとしての価格が機能している





生産について効率的~達成の過程






米作農家が小麦畑をたくさん持ち、小麦農家が田んぼをたくさん持っていることは、
非効率な状態です。しかし市場では(条件)の2が備わっているので、
取引により非効率な状態は改善されていきます。



  • 米作農家→田んぼを高い額でも買う意欲あり→田んぼは米作農家に→市場は均衡
  • 小麦農家→小麦畑を高い額でも買う意欲がある→小麦畑は小麦農家に→市場は均衡



このように米の市場とパンの市場が、それぞれ均衡に達するならば、
生産要素として土地の市場は、生産について効率的であると言えます。



生産可能性フロンティアと生産の効率性








(「効率性と一般均衡」シリーズ終わり)




2013年8月8日木曜日

効率性と一般均衡 その2

消費の効率性について



前回のブログ(リンク)では、効率的な個別市場が均衡していることを拡張して、
経済全体が一般均衡することを述べました。経済全体で一般均衡に至るためには、
3つの基準を満たす必要があります。


  1. 消費について効率的
  2. 生産について効率的
  3. 産出について効率的


今回は、このうち消費について効率的であることを考えていきましょう。





おにぎり屋さん(Onigiriyasan) / sprklg






消費について効率的~意味と例




【意味】
消費者間で財をどのように再分配しても、他の消費者の状態を悪くすることなく、
ある消費者の状態を良くすることができないときのこと


【例】
「朝ごはんのために米とパンだけを扱う主食市場」


(条件)
1.事前にわざと米好きな人にはパンを多く配り、パン好きな人には米を多く配る
2.この市場は完全競争市場であり所有権と経済シグナルとしての価格が機能している



消費について効率的~達成の過程





米好きな人がパンをたくさん持ち、パン好きな人が米をたくさん持っていることは、
非効率な状態です。しかし市場では(条件)の2が備わっているので、
取引により非効率な状態は改善されていきます。


  • 米好きの人→米を高い額でも買う意欲あり→米が手元に届く→市場は均衡
  • パン好きの人→パンを高い額でも買う意欲あり→パンが手元に届く→市場は均衡


このように米の市場とパンの市場が、それぞれ均衡に達するならば、
朝ごはんの市場は、消費について効率的であると言えます。



均衡から一般均衡へ







(つづく)




2013年8月7日水曜日

効率性と一般均衡 その1

個別市場から全体市場への分析



効率性とは何か? その1 → 鶏卵
効率性とは何か? その2 → カローラ アクシオ



で、それぞれの個別の財の市場が効率的であることについて述べてきました。
ミクロ経済学において効率的であるということは、個別の財の市場だけではなく、
個別の財の市場を足し合わせた、経済全体にも拡張可能です。





おにぎり / iyoupapa





均衡から一般均衡への拡張





個別の市場で効率的で需要と供給が等しくなることを均衡と言いますが、
すべての市場において均衡に達すると、経済は一般均衡に達したと言います。



一般均衡とは個別市場の財の考え方を、経済全体に拡張した考え方になります。




経済全体の効率性の基準





経済全体が効率的であるため、つまり経済が一般均衡であるためには、
次の3つの基準が満たされている必要があります。


  1. 消費について効率的
  2. 生産について効率的
  3. 産出について効率的


次回以降のブログでこれらの基準を考えていきましょう。

(つづく)







2013年8月2日金曜日

効率性とは何か? その2

効率性達成するための手段 「所有権」と「価格」



前回の記事(リンク)で、


  • 市場は効率的である
  • 市場は総余剰を最大化する


ということについて書いてみました。
それでは、なぜ市場は効率的であったり、総余剰を最大化できたりするのでしょうか?



市場の余剰の最大化








「消費者も生産者もトクになるから」というのが、丸めた答えになるかもしれませんが、
それだけでは、半分ぐらいの答えにしかならないので、詳しく見ていきましょう。





取引が行われる理由→所有権





所有権とは資源であれ財であれ、価値あるモノの処分を、
好きなように処分できる権利のことを言います。



もし、自動車を買っても所有権がなく、後から政府に没収されるということになれば、
誰もすすんで、自動車の売買に応じようとはしないでしょう。



もちろん、清浄な空気やきれいな水のように、所有権が明確でない財も存在しますが、
たいていの財は、自動車のように所有権を明確に定めることができます。





Nakayan's tilt-shift The used car dealer in Yokohama 箱庭中古車屋 / pinboke_planet





取引が行われる理由→価格





価格とは経済シグナルであり、取引参加者がより適切な経済的意思決定を
行う助けとなるあらゆる情報のことを指します。



例えば、カローラ アクシオの新車価格が139万円だとすれば、
139万円以上の額を支払っても良いと思うアクシオの消費者と、
139万円以下の費用で販売できるアクシオの販売者が、
世の中に存在することが、すべての経済主体の知るところとなります。



このように所有権価格の存在によって、意欲のある取引参加者は、
すすんで取引に応じ、市場の余剰が最大化され市場も効率的となります。


(「効率性とは何か?」シリーズ終わり)





2013年8月1日木曜日

効率性とは何か? その1

「効率的」=「総余剰の最大化」



普段の会話でも使われる言葉に「効率的」という言葉があります。
「●●●は効率的だ!」とか、「効率的な▲▲▲を目指して」!とか、
気軽に使われていますが、「効率的」とは、ミクロ経済学でもキッチリと定義された専門用語です。



【効率的】
他の人びとを犠牲にすることなく誰かの暮らしを良くするような
あらゆる機会が活用しつくされているときの市場や経済の状態。





名古屋コーチンのたまご / yto





この言葉の定義だけでは、「効率的」な状態は分かりにくいかもしれません。
この「効率的」な状態を作図で表現すると、次のような図になります。



市場の余剰の最大化






消費者余剰と生産者余剰





上の作図の状態は、効率的でもあり、市場の総余剰を最大化しているとも言います。
総余剰を最大化している状態では、消費者と生産者という、2種類の取引参加者は、
それぞれの取引利益を、最大化しています。この取引利益余剰とも言われます。



消費者余剰の最大化






生産者余剰の最大化




取引は均衡に達するまで行われる





例えば、1個10円で100単位の取引で均衡している鶏卵の販売市場で、
15円でその鶏卵を買うことができる消費者にとって、
その取引に応じれば、5円分が取引利益であり、余剰であるとも言えます。



消費者の余剰の例





1個10円で均衡している鶏卵の販売市場で、8円で鶏卵を販売できる
生産者にとって、その取引に応じれば、2円が取引利益であり、余剰であるとも言えます。



生産者の余剰の例





全ての売り手と買い手が、価格受容者となる完全競争市場では、
均衡点に達するまで取引が行われます。このような状態を指して、


  • 市場は効率的である
  • 市場は総余剰を最大化する


とも言います。
(つづく)