おちゃらけミクロ経済学: 6月 2013

2013年6月19日水曜日

独占企業が利潤を最大化させる方法 その3

独占利潤が発生する仕組みについて




完全競争市場にいる企業も、独占市場にいる企業も、目的は同じです。
利潤を最大化させることです。では利潤を最大化させる生産量というのは、
どのくらいのことを指すのでしょうか?



企業が利潤を最大化をさせる生産量とは、追加的に1単位の財・サービスを生産したときに
得られる収入が、その1単位をつくったときにかかった費用と、同じになる生産量のことを
言います。



これを経済学の用語で、最適生産量のルールと言い、数式で表すと以下のようになります。



  • 限界収入=限界費用(MR=MC)



なお、最適生産量のルールについての詳しいことについてはコチラまでどうぞ!






Mobil Station Sign, Rhinebeck NY / NNECAPA






需要曲線と限界収入曲線の形状が異なる






ただし、完全競争市場の企業と独占市場の企業で、
利潤を最大化させるためのルールは同じでも、作図にして表すと両者の見た目は、異なります。



最適生産量ルールの比較







限界費用はともに右上がりの曲線で、形状は同じですが、限界収入の傾きが異なります。
限界収入の傾きが異なる理由は、次のとおりです。



  • 完全競争市場→多数の企業→価格に影響力を行使できない
  • 独占市場→→→企業は1社→価格に影響力を行使でき、生産量も調整できる




需要曲線と限界収入曲線の差





このグラフに需要曲線をのせると、独占市場では次のように価格が決まります。



独占利潤の発生





  1. 需要曲線は限界収入曲線を常に上回る
  2. MR=MCで決まった生産量Qのところで生産量が決まる
  3. 生産量Qのところで対応するB点で価格が決まる


このとき、幅がQ、高さがB-Aで囲われた、灰色の面積が、
独占企業の独占利潤(独占レント)となります。
独占利潤の源は需要曲線の販売価格と、限界収入の差にあります。
(つづく)








2013年6月16日日曜日

独占企業が利潤を最大化させる方法 その2

独占企業の数量効果と価格効果について




前回独占市場における数量効果価格効果について、文字で説明しました。
これらは、表や作図で説明した方が、より理解が深まります。



下の表はある国の水道公社の、総収入、平均収入、限界収入を表します。
ここでいう、水道公社とは、独占企業のことです。



独占企業の総収入、平均収入、限界収入









水道記念館-浄水場見学-10 / iyoupapa




独占企業の需要曲線





まず、この表にもとづいて、需要曲線を書くと右下がりの曲線になります。
独占市場には、1社しか企業が存在しないため、生産量を増やせば、価格は下がります。
このとき数量効果価格効果が、表れます。



独占企業の需要曲線






  • 数量効果→生産量が増加したことによる、総収入の増加
  • 価格効果→価格が減少したことによる、総収入の減少




独占企業の限界収入





次に表から、限界収入を取り出して作図してみましょう。
すると限界収入の曲線は、常に需要曲線の下側に位置することが分かります。
これは、やはり、独占市場において、企業が1社しか存在しないためです。



独占企業の限界収入






独占企業の需要曲線と限界収入






例えば、企業が水の生産を3ガロンから4ガロンに増加すると、1ガロン当たり7ドルで
販売できるにもかかわらず、総収入は4ドルしか増加しません。



独占企業は右下がりの需要曲線に直面しているために、
限界収入は価格よりも低くなります。販売量を増やすためには、
独占企業は、すべての顧客に対して財の価格を、引き下げねばならないからです。



したがって、4ガロン目の水を販売するためには、はじめの3ガロンについても
1ドルずつ少ない収入しか得られなくなります。この3ドルの損失は、
4ガロンめの価格(7ドル)と4ガロンめの限界収入(4ドル)の差となります。


(つづく)



【参考文献】


グレゴリー・N・マンキュー マンキュー経済学I ミクロ編(第3版) 東洋経済新報社













2013年6月14日金曜日

独占企業が利潤を最大化させる方法 その1

独占企業は価格も数量も調整できる



完全競争市場独占市場とでは、市場構造のタイプが異なります。
しかし、そこに存在する企業の目的は同じです。
どちらも利潤を最大化させるための行動をとります。



しかし、多数の企業が存在する完全競争市場と、1社しかいない独占市場では、
需要曲線と限界収入曲線の形状が異なります。
これらの曲線の形状が異なると、企業にもたらす利潤がかなり変わってきます。





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需要曲線と限界収入の位置関係に注目





まず需要曲線を比較してみましょう。



需要曲線の比較






完全競争市場の需要曲線


  • どの企業も価格に影響を及ぼすことはできない。
  • 価格はどの数量でも同じ
  • 需要曲線の形状は水平



独占市場の需要曲線


  • 1つの企業が価格に影響を及ぼすことができる
  • 生産量を減らせば価格は上がり、増やせば価格は下がる
  • 需要曲線の形状は右下がり




次に限界収入を比較してみましょう。



限界収入曲線の比較





完全競争市場の限界収入


  • 限界収入曲線は常に水平
  • 販売価格(需要曲線)と常に等しい




独占市場の限界収入


  • 限界収入曲線は右下がり
  • 限界収入曲線は、需要曲線の下に位置する




生産量効果と数量効果





このように完全競争市場独占市場では、需要曲線と限界収入の位置関係が異なります。
それでは、上の作図のように、
独占市場限界収入が、需要曲線の下側に位置するのはなぜでしょうか?



これは冒頭に戻りますが、独占市場では企業が、
1社しか存在しないため、生産と価格に影響力を行使することができるから
です。



  • 数量効果→より多くの生産物が販売されるので、総収入を増やすことができる
  • 価格効果→価格が下落するので、総収入を減らすことになる



数量効果価格効果については、文字で説明するより
作図やグラフで示した方が分かりやすいので、次回に回します。
(つづく)











2013年6月3日月曜日

独占とは その2 

独占はなぜ生じるのか?




【独占】
ある企業が、その製品の唯一の生産者であり、その企業の製品が、
他に密接な代替材をもたないとき、その製品は独占状態にあるという。




実際にのところ、現代の経済で独占が生じれば、
「独占禁止法」の対象となり、独占企業は分割されます。



それでもいくつかの理由により、独占は生じます。今回のブログでは、
なぜ独占が発生するのか、考えてみましょう。
独占が発生るするのは、主に次の3つの理由が考えられます。






大赤道儀室にあった黒電話 / monoooki




独占が発生する3つの理由





  • 資源の独占

1つの企業が重要な資源を保有することで独占が発生します。
このとき、当該企業は非常に強い市場支配力を発揮し、かなり自由な価格付けを行えます。

例)ダイヤモンド



  • 政府による独占

政府が1人の人間や1社の企業に、排他的な販売権を与えるために独占が生じます。
具体的には、政府は特許権や著作権によって、排他的な販売権を保護します。

例)新薬の製造権、小説の印刷・販売権



  • 自然独占

1つ以上の企業が市場全体に供給した方が、2社以上の企業で供給するよりも
費用がかからないときに生じます。

例)上下水道




自然独占は規模の経済から発生する





資源の独占政府による独占は分かりやすいですが、自然独占はやや説明が
必要かもしれません。自然独占の発生を別の言葉で言い換えると、
独占企業が利潤最大化を望む生産量において、規模の経済が生じるときに独占が発生します。



下の図は独占企業の費用と生産量の関係を表します。
ある生産量までは費用が下がり続けます。これは、最初に投下した固定費用が、
大量の販売によって、費用の分散が生じているためです。



自然独占と規模の経済








(「独占とは」シリーズ終わり)



【関連エントリ】


規模の経済と規模の不経済 その5







2013年6月1日土曜日

独占とは その1

完全競争と独占と寡占と独占的競争




小麦・電気・コーラ・DRAMメモリ(半導体)・都市ガス・上下水道・
ガソリン・住宅・ハイブリッドカー



これらは、この社会に存在する財やサービスです。
ランダムに並べられてますが、次のように並べ替えることができます。


  1. 小麦・ガソリン・DRAMメモリ(半導体)
  2. 電気・都市ガス・上下水道
  3. コーラ・ハイブリッドカー・住宅




水道記念館-噴水-01 / iyoupapa




2つの要素にもとづく市場構造





最初、ランダムに並べられていた財は、市場構造のタイプによって
3つに分類することができます。この市場構造とは、次の2つの要素に基づきます。


  • 生産者の数
  • 財やサービスが差別化されているかどうか

市場構造のタイプ 1





この市場構造のタイプによって、最初にあげた財やサービスを割り振っていくと、
次のように当てはめていくことができます。



市場構造のタイプ 2




完全競争市場から独占市場へ





今回のシリーズでは、4つの市場構造のタイプのうち、独占市場にスポットをあてて考えていきます。


市場構造のタイプ 3





独占市場は、今まで取り上げることが多かった完全競争市場とは対極にあり、
その特徴を知ることによって、



  • 独占はなぜ問題が生じるのか?
  • 独占の理論は無用なのか?



ということを考えていきたいと思います。



【関連エントリ】


完全競争市場 価格は決められるかその1