おちゃらけミクロ経済学: 3月 2013

2013年3月31日日曜日

ブラック企業における限界効用 その3

労働と余暇をどのように配分するか



前回のブログでは、1時間あたり(1円あたり)の限界効用のお話をしました。
なぜ、こんな話をしているか?



それは、賃金と余暇の異なるサービスの消費について単位をそろえて、
最大の満足度を得るためです。そうすると、ブラック企業の考察ができそう気がします。






Summer vacation 2011 friends and family / kevin dooley





1時間あたりの限界効用





1時間あたり(1円あたり)の限界効用を数式で表してみましょう。



  • 賃金の限界効用 / 時間 = MUw / Hw
  • 余暇の限界効用 / 時間 = MUv / Hv  


ただし、MU:限界効用 H:時間 w:賃金 v:余暇



 

「賃金」も「余暇」もほどほどに





労働供給の分析では、賃金も余暇も多い方が、労働者の満足は高くなります。
作図で言えば、賃金はw1よりもw2の方が、余暇はv1よりもv2の方が、それぞれ
満足度は高くなります。



時間配分予算制約線







といっても、1日は24時間しかありません。「24時間ずっと働く」とか、
「24時間余暇だけを取る」とか、極端なことはできません(少なくとも長期的には)。



時間配分予算制約線(2)







すると、予算制約線の「ほどほど」のところで、労働と余暇に配分する必要があります。
この「ほどほど」を決めるために、1時間あたりの限界効用の考え方を使えることができます。
(つづく)






2013年3月26日火曜日

ブラック企業における限界効用 その2

「ものさし」を合わせておきましょう




今回は、労働をして賃金を得る満足感と、休息をして得る余暇を満足感をどうやって
比較するのかというお話です(前回のブログはコチラ)



労働と休息というまったく異なる体験の消費を比べるためには、
単位をそろえて考える必要があります。





Camp'Otel Family Vacation / Librarygroover





1時間あたり・1円当たり




タイトルで「限界効用」という専門用語を使っています。
この用語について経済学のテキストを読んでいると、
時間やお金の単位を使ってよく次のように表現されています。


  • 1時間あたりの限界効用
  • 1円当たりの限界効用


注目すべき点は、「1時間あたり」、「1円あたり」とつけているところです。




異なる「ものさし」でははかれません!



  • 賃金と余暇
  • ごはんとお肉



これらは、形状も量も異なります。お米の単位(石やキロ)と肉の単位(ポンド)を
そのまま比べても仕方がないのと同じように、賃金余暇をそのまま比較しても
意味がありません。



効用(主観的な満足度)をはかりやすくするためには、
まず時間やお金で単位を揃えます。



ブラック企業というと何かと人それぞれの感情が入り乱れます。
ですが、冷静に対処するためには、ほかの人と合わせやすい「ものさし」を用いる必要があります。
(つづく)








2013年3月25日月曜日

ブラック企業における限界効用 その1

賃金と余暇のトレードオフについて



前回のブログで、こんな供給曲線を作成しました。
ミクロ経済学の用語を使うと、後方屈曲的な労働供給曲線といいます。



後方屈曲的な労働供給曲線



後方屈曲的な労働供給曲線




今回は、曲線そのものではなく、軸についてのお話をしましょう。
(赤色の枠で囲った部分について)


後方屈曲的な労働供給曲線 軸の見方



後方屈曲的な労働供給曲線




軸のみかた~労働時間と賃金率





一般的な財・サービスの供給曲線の軸を見ると、次のようになっています。



  • 横軸→生産量
  • 縦軸→価格



これを、労働供給曲線に読み替えると、次のようになります。



  • 横軸→労働時間または余暇時間
  • 縦軸→賃金率




時間は稀少な資源である





労働供給曲線の分析(ブラック企業の分析)をするためには、
まず1日24時間という時間は、「稀少な資源」であるという前提に立ちます。



その「稀少な資源」である時間について、



  • 労働にあて賃金を得るか?
  • 休息にあて余暇を得るか?



トレードオフの関係としてとらえ、労働供給曲線の分析を単純化します。



後方屈曲的な労働供給曲線 軸の名前


後方屈曲的な労働供給曲線 軸の名前




ただ、労働をして賃金を得る満足感と、休息をして得る満足感は、
どうやって比較するんでしょうか?
(つづく)




2013年3月24日日曜日

ブラック企業を分析するためには? その2

ブラック企業のための基礎用語




何かと話題のブラック企業について「何か」書きたいと考えていたら、
後方屈曲的な労働供給曲線に出会いました。作図するとこんな感じです。



後方屈曲的な労働供給曲線








ブラック企業とひと口にいって、色々な思いが乱れ飛んでいるせいか、
定義はイマイチはっきりしません。



ならば、後方屈曲的な労働供給曲線や、賃金と余暇の時間配分を使って
うまく説明はできないか?と考えた次第です。






Wage request publicity, 1968 / Seattle Municipal Archives





応用問題(ブラック企業)は単純なモデルに置き換える





ブラック企業のような旬な(?)話題をミクロ経済学の知見を使って
分析や議論すると、次のようなメリットがあると思います。


  • 複雑な内容を単純なモデルに置き換えられる
  • 他の人と話を合わせやすい



「事態はもっと複雑だ!」とおっしゃる方がいるかもしれませんが、
複雑な事項は、「単純なモデル」の上に成り立っている話です。
応用的な話の前に、まずモデルです。



分析のために必要なツール





要は、ブラック企業を単純な経済学モデルに落とし込んでみようという試みです。
ただそのためには、後方屈曲的な労働供給曲線だけでは、理解が進みません。



管理人が個人的に調べてみたところ、


  • 1時間あたりの限界効用
  • 代替効果と所得効果
  • 無差別曲線


といった分析ツールについて、知っておく必要があります。
とりあえず次回からは、1時間あたりの限界効用について考えてみましょう。
(「ブラック企業を分析するためには?」シリーズ終わり)





2013年3月23日土曜日

ブラック企業を分析するためには? その1

話題のブラック企業をミクロ経済学で説明




ミクロ経済学では、ほとんどの財について供給曲線が、右上がりとなります。こんな感じです。



一般的な供給曲線



供給曲線



  • 価格が上昇すれば生産量は増加
  • 価格が下落すれば生産量は減少



ところが、労働サービスという財は、必ずしも右下がりの曲線にはなりません。



Labor union parade

Labor union parade, NY., May 1, 1911 (LOC) / The Library of Congres





途中で変わる労働供給曲線





一般的に、労働供給曲線は、次のような形状を取ると言われています。


  • ある一定のところまでは、右上がり→賃金率が上昇すれば、労働時間は長くなる




労働供給曲線(1)



労働供給曲線右上がり





  • ある一定のところからは、右下がり→賃金率が上昇すれば、労働時間は短くなる



労働供給曲線(2)








後方屈曲的な労働供給曲線





2つを合わせると、アルファベットの「U」を、左に転がしたような形が出来上がります。



後方屈曲的な労働供給曲線




後方屈曲的な労働供給曲線




この供給曲線を専門用語を使うと、後方屈曲的な労働供給曲線といいます。
この曲線を持ち出しただけでは、何かと話題のブラック企業について
ミクロ経済学的に、説明することはできません。



次回はブブラック企業を分析するためには、他にどんなツールが必要か、
説明していきましょう。
(つづく)




2013年3月11日月曜日

最適消費を選択する その2

最適消費はグラフで分かる!




あなたはどうすれば、効用(主観的な満足度)を最大化できるでしょうか?
はてなダイアリーとtwitterを例にして考えてみましょう。



あなたは、はてなダイアリーの記事や、twitterのtweetを眺めるのが大好きです。
ただし、はてなダイアリーとtwitterを眺めることに以下のような制約条件があります。
(前回のブログ)


  • 眺める時間は1日あたり20分まで
  • はてなダイアリーの記事を1本読むのにかかる時間は4分
  • twitterのtweetを一つ読むのにかかる時間は2分




はてな

hatema on psp / typester




組み合わせで効用を最大化




1日20分という時間で読める記事やtweetは限られていますが、
効用(主観的な満足度)はそれぞれ異なります。
効用を最大化させるためには、最適な消費の組み合わせを考える必要があります。



今回の例であれば、最適な消費の組み合わせは、6通り存在します。
また読める記事が多くなればなるほど、効用は大きくなります。



はてなとtwiterの組み合わせ


はてなとtwiterの組み合わせ




あなたの予算と総効用



あなたの予算と総効用



総効用を直観的に理解する




主観的な満足度を測るためには、第6列の総効用に注目します。
今回の例では、C点が、総効用を最大化させる最適な消費の組み合わせとなります。



つまり、はてなダイアリーの記事を2本、twitterのtweetを6個を読むことによって
あなたの満足度を最大化できます。総効用が最大化している様子を、
グラフで表すと次のようになります。



あなたの総効用関数


あなたの総効用関数





このように直感的に、総効用が最大化する点を表現することもできますが、
基準となる単位をそろえることによって、異なる財やサービスの満足度を測り、
最適な消費の組み合わせを探すこともできます。



次回のシリーズでは、「単位」をそろえることについて考えてみましょう。
(「最適消費を選択する」シリーズ終わり)








2013年3月10日日曜日

最適消費を選択する その1

「どれぐらいか?」の選択



今回も前回のシリーズに引き続き、消費者行動の分析に関する話題です。
テーマは、財やサービスをどのように組み合わせて消費することで、
自分の満足度を最大化させるか
、という最適消費についてです。



この最適消費の考え方が分かれば、応用として次のようなことが分析できます。
今回は「結論」よりも、その「結論」に至る「過程」が重要です。


  • 1時間あたりの賃金が増えたとき、労働時間を長くするか?余暇に回すか?
  • 銀行の利子率が上がったとき、貯蓄を増やすか?消費を増やすか?




Emerging Media - Twitter Bird / mkhmarketing





はてなダイアリーを読むか?twitterを見るか?




あなたは毎日のひそかな楽しみとして、仕事が終わった後にはてなダイアリーと
twitterのtweetを眺めることです。世間の人々が、本音として何を考えているかということに
とても興味を持っています。



ただし、あなたが、はてなダイアリーとtwitterを眺めることに以下のような制約条件があります。


  • 眺める時間は1日あたり20分まで。
  • はてなダイアリーの記事を1本読むのにかかる時間は4分。
  • twitterのtweetを一つ読むのにかかる時間は2分。


これらの条件にもとづいて作図をすると、次のようになります。



はてなダイアリーとtwiterの組み合わせ


消費の組み合わせ


右下がりの予算線




このグラフで表された右下がりの直線は、予算線と呼ばれます。
なぜこのような形状になるかは、時間の割り当てについて、極端な例を2つ上げれば分かります。


  • 20分すべてをはてなダイアリーの記事を5本読むことに費やす→座標(5,0)
  • 20分すべてをtwitterのtweetを10個読むことに費やす→→→→座標(0,10)


これら、2点間の座標を結べば、このような右下がりの直線になります。
(つづく)





2013年3月5日火曜日

ブログの満足度は? 効用理論その3

消費者行動を分析するための基礎固め




あなたが、とても面白いブログを次々に読んでいったときの、、主観的な満足度は、
効用という考え方で表すことができます。これら2つのグラフは、効用関数
限界効用曲線と呼ばれています(前回のブログ)



ブログの効用関数




ブログの効用関数







ブログの限界効用曲線




(効用関数と限界効用曲線の特徴)


  1. 読む記事の本数が多くなると、効用関数は増加数は鈍化する(上)
  2. 9本以上読むと、ブログを読んだ全体の満足度は逆に下がる(上)
  3. 8本目から9本目の記事を読むときに、追加的に得られる効用はマイナス(下)



効用と限界効用逓減の法則




人間はコンピューターではありませんので、主観的な満足度を厳密に数値化できる
わけではありません。


しかし、ブログを読むにも時間はかかります。
限りある時間を使うため、たとえおおざっぱにでも、読むかどうかの
選択をしなければなりません。そのため効用という考え方は非常に有用です。



効用の総数や追加的な変化を効用関数限界効用曲線で表現することができますが、
これらには、限界効用逓減の法則という考え方が貫かれています。





ski

skiing... / nonanet




限界効用逓減の法則




限界効用逓減の法則とは、ある財やサービスをもう1単位追加的に消費しても、
得られる満足度は、徐々に低下するという考え方です。



もちろん、すべての財やサービスに限界効用逓減の原理が、
当てはまるわけではありません。スキーや水泳のように、総運動量が増えれば
増えるほど、追加的な限界効用が逓増する財もあります。
(練習量が上がるとそのスポーツをより楽しむことができるから)



ですが、たいていの財やサービスは、真夏の日に飲むコーラのように、
限界効用逓減の原理に該当します。
(1杯目のコーラはおいしいが、10杯目のコーラはお腹をくだすかもしれない。
スキーや水泳も運動量が多すぎるとケガをし、総効用は激減する)



今回のシリーズは、効用効用関数限界効用曲線の言葉の意味について、
ご紹介してきました。これで消費者行動の分析をするための準備が整いました。
(「ブログの満足度は? 効用理論」シリーズおわり)





2013年3月4日月曜日

ブログの満足度は? 効用理論その2

「スター」で総効用を表現しましょう




前回のブログのとおり、「はてなスター」は、他のブログサービスと比べて、
主観的な満足度を測る、効用がとても分かりやすい機能です。




facebookの「いいね!」やBloggerの「g+1」が一つの投稿や記事に対して、
評価を単数でしか表せないのに対し、はてなダイアリーの「はてなスター」は、
一つの記事に対して、評価を複数で表すことができるからです。





facebook like button

facebook like button / Sean MacEntee




効用(満足度)をスターで表す




例えば、あなたがある日、めちゃくちゃおもしろいテーマのブログを見つけたとしましょう。
このブログにも、満足度を表すための★(星)印を付けられる機能があるとします。
単位は、仮に「スター」としておきましょう。




あまりの面白さにあなたは、その記事に対して、あなたは15スターを付けました。
他に面白い記事はないかと思って探すと、またまた面白い記事に出くわしました。
今度は、13スターを付けました。



以降、あなたはこの調子でブログの記事にアクセスしていき、スターの総数、
つまり、総効用限界効用は次のとおりとなりました。



ブログの効用






ブログの効用関数と限界効用曲線




次にこの表を2つのグラフで表してみましょう。特徴を表すと、以下のとおりとなります。




ブログの効用関数



ブログの効用関数




ブログの限界効用曲線




ブログの限界効用曲線



  1. 読む記事の本数が多くなると、効用関数(右)における総効用の増加数は鈍化する
  2. 9本以上読むと、ブログを読んだ全体の満足度は逆に下がる。
  3. 8本目から9本目の記事を読むときに、追加的に得られる効用はマイナス


(つづく)

2013年3月3日日曜日

ブログの満足度は? 効用理論その1

ブログの満足度の測り方




「おちゃらけミクロ経済学」といっても、基本はブログサービスです。
そのため、Googleが運営しているBloggerサービス以外にも、
他にどんなブログサービスがあって、どんな個別サービスがあるのか、けっこう気になります。



その中で管理人が、知る得る限りで特徴的なブログサービスをあげるとすれば、
はてなダイアリーが挙げられます。(2013年2月28日現在)



何が変わっているかといえば、「はてなスター」という機能があることです。
はてなダイアリーを使っているブログを見ると、記事の隅のほうに、★(星)をつけることができます。




「はてなスター」はリアルな世界でいうところの、「あいさつ」みたいなもんです。
また、面白い記事に出会うと、思わず★を付けたくなります。
「あいさつ」だけではなく、一種の満足度を表す機能でもあります。




はてなスター


どのサービスが満足度を測れるか?




でもそのような機能は、このBloggerの「g+1」とか、facebookの「いいね!」ボタンにもあります。
これらと何が違うのでしょうか?それは、1人当たり付けられる個数が、違うということです。



  • はてなダイアリーの「★」→何個でもOK
  • Bloggerの「g+1」→1個のみ
  • facebookの「いいね!」→1個のみ



Bloggerの「g+1」やfacebookの「いいね!」ボタンは、1人1個しか付けられません。
以前付けた投稿と比べて、どちらの方が、満足度が高いのかは、分かりません。



それに対して、はてなダイアリーの「★」は、1人が1つの記事に対して、
複数個の「★」を付けることができます。そのため、後でどの記事が満足度が高かったのか、
比較することができます(もちろん主観的な比較しかできないが)。



はてなスターは満足度を表す




はてなダイアリーの「★」は、ちょうど消費者効用と置き換えることができます。
ミクロ経済学でいうところの効用とは、消費者行動を理解するための概念で、
財やサービスの消費から得られる、満足の尺度を表します。



「★」は複数個付けられるため、「あの記事とこの記事のどっちが面白かったか?」
ということを、数値で表すことができます。これからお話しする内容は、
そんな主観的な評価について考える、消費者の効用理論についてのお話です。


(つづく)