おちゃらけミクロ経済学: 10月 2013

2013年10月31日木曜日

寡占市場でのもうけ方 その2

生産量の比較と差別化した商品で勝負!




前回、寡占市場における企業が、法律に違反することなく、
どうやったら利潤最大化を図れるかを考えたら、2つの考え方に行き当たりました。



前者を数量競争、別名クールノー行動と言い、
後者を価格競争、別名ベルトラン行動と言います。


クールノー行動とベルトラン行動







クールノー行動とは?




クールノー行動とは各企業が、他社の生産量を所与として
自社の利潤を最大化するように生産量を選ぶことを指します。




例えば、JR線と並行して走っているような電鉄会社をイメージしてみましょう。
もしあなたが私鉄の社長であれば、先にJRが1年間に走らせる電車の
運行本数を決めてしまえば、JRの運輸量は確定しているとみなせるでしょう。



あなたは、JRの運輸量を決まったものとして、自社の鉄道に電車を
何本走らせるか決めることによって、自社の利潤を最大化できるようになります。



クールノー行動によってやみくもに電車を走らせて、運輸価格の値崩れが発生し、
損失が発生することを防ぐことができます。






JR奈良站 / Richard, enjoy my life!




ベルトラン行動とは?





企業が他の企業の価格を所与として、自社の利潤を最大化
するように価格を決定するときベルトラン行動(価格競争)と呼びます。




例えば、不況になった場合の航空業界を考えてみましょう。
不況前の羽田‐関空便が、片道料金1万5千円だったとします。



不況になると、1万5千円というチケット代では、売れ残りが生じ、
航空会社であるJ社やA社の供給能力に余剰が生じます。



そこで各航空会社は、空席だらけの飛行機を飛ばすよりも、
少しでも座席を埋めて、飛ばしたがりますので、料金の切り下げが始まります。



ただし、この「料金の値下げ合戦」は、価格を限界費用ギリギリにまで
落とすことになるので、結局は超過利潤が発生しない、完全競争になってしまいます。



もっとも、このような超過利潤が発生しない状態は、
どの企業も避けたいところなので、価格だけで勝負するのではなく、
食事や時間帯、席などに差をつけ、同質化された航空サービスに差をつけようとします。




ANA B777-281 (JA711A "StarAlliance") @ HND/RJTT / Hyougushi





2013年10月30日水曜日

寡占市場でのもうけ方 その1

価格をいじると、利潤の機会が増える



前回のシリーズでは、寡占企業がどうやったら、
利潤の最大化を図れるかを考えてみました。



寡占企業が直面する「経済学的難問」 (共謀と非協力的行動)






赤線で囲ったところが、前回のシリーズのポイント。



寡占市場の企業が、利益を最大化させるためには、
寡占企業同士で話し合って生産量を調整する方法が考えられます。
しかし、これはカルテルと呼ばれる行為で独占禁止法に抵触します。




Toshiba HD-EP30 and Sony DVD Recorder / William Hook




取決めしなくてもできる寡占企業の利潤最大化





では、寡占企業は利潤の最大化を図る機会がないのかと言われれば、
そんなことはありません。共謀をしているケースは市場価格を一定
としたときに、行いますので、その市場価格が変動することになれば、
利潤を最大化させる機会が現れます。



寡占企業が直面する「経済学的難問」 (クールノー行動とベルトラン行動)






青線で囲ったところが、今回のポイント。




クールノー行動とベルトラン行動





で、市場価格が変動する寡占市場を前提として、さらに条件が2つに分かれます。


  • 生産量がすでに決まっている場合
  • 生産量が予め決まっていない場合



クールノー行動とベルトラン行動




  • 前者を数量競争、別名クールノー行動と言い、
  • 後者を価格競争、別名ベルトラン行動と言います。



2013年10月25日金曜日

寡占市場~共謀と非協力的行動 その3

「正式でない」共謀も存在する




産業全体で利潤が減少するとしても、寡占企業は独占企業よりも
生産量を増加させるインセンティブを持ちます。



生産量を増加させると、財の価格は下がります。
その負の価格効果は、独占企業1社がすべての財について、
引き受けけなければないのに対して、2社以上の寡占企業は、
自分のところの財の価格だけを下げればいい、と考えるからです。



寡占企業1社分の財の価格を引き下げることは、独占企業が
価格を引き下げることよりも影響が小さくみえるます。
そのため寡占企業は、自社の利益だけを追求する非協力的行動
出ることが考えられます。




Cherry Cola / pmsyyz





「正式な」共謀→独占禁止法違反






しかし、改めてコーラの需要表を見ると、寡占企業(複占企業)同士で
生産量を調整した方が、産業全体の利益は大きくなります。


コーラの需要表





従って、寡占企業は共謀することについてインセンティブを持つことになります。
しかし、「正式に」共謀を持つことは、独占禁止法のカルテルに抵触します。
関係者は、公正取引委員会から呼び出され、疑惑の目でにらまれることになるでしょう。




共謀か?非協力的行動か?





それでは、「正式な共謀」ができない寡占企業にとって、カルテルは不可能で、
非協力的行動によって、生産競争を繰り返すしかないのでしょうか?



もちろん、独占禁止法を無視して、こっそりとカルテルを推し進める場合もありますが、
「正式な」取決めがなくても、共謀を実施することはできます。
それは、市場価格にこだわらず、生産物を販売する場合です。


寡占企業が直面する「経済学的難問」








(寡占市場~共謀と非協力的行動」シリーズ終わり)

2013年10月24日木曜日

寡占市場~共謀と非協力的行動 その2

独占は1社、寡占は2社以上、だから…



独占企業が追加的に財を1単位多く生産することは、
以下の2つの作用を生み出します。


正の数量効果

生産量を増加させて、もう1単位追加的に販売することで、
その1単位の販売価格分だけ収入が増加する。





負の価格効果

生産量を増加させて、もう1単位追加的に販売することで、
企業は販売する財の価格を引き下げねばならない。






独占企業の需要曲線と限界収入の関係を見ると、
限界収入がマイナスになってしまうので、
独占企業の場合、おのずと「作りすぎ」に歯止めがかかります。





Coca-Cola-Sprite-Fanta-Can__14647 / Public Domain Photos





寡占企業が生産物の数量競争をする理由とは?





寡占企業も独占企業と同様に、正の数量効果と負の価格効果を発揮します。
ところが、寡占企業の場合、自社の生産物に対する、負の価格効果には、
関心を示しますが、寡占企業は市場支配力が弱く、他社のそれには、無関心です。



従って、寡占市場の各企業は、生産量増加による負の価格効果よりも、
正の数量効果の影響が強く認識されてしまいます。




生産量を増加させることで、寡占市場全体で利潤が減少するとしても、
それぞれの寡占企業には、生産量の増加が利潤を生むように、思えてしまうのです。


コーラの需要表









2013年10月18日金曜日

寡占市場~共謀と非協力的行動 その1

寡占企業のがもつ生産量増大へのインセンティブ



前回のシリーズで説明した、寡占市場の複占企業が直面する「経済学的難問」
価格と生産量の面から1つずつ解き明かしていきましょう。
今回は価格を所与として、生産量を調整するケースを考えます。


寡占企業が直面する「経済学的難問」





この場合、寡占市場を独占市場と比較すると、
寡占市場の企業にどのような問題が発生するか分かりやすくなります。



正の数量効果と負の価格効果





ところで寡占市場の企業も独占市場の企業も、企業は企業ですから
利潤の最大化を求めて、どちらのタイプの企業でも、その生産量を
少しずつ増加させていきます。



この少しずつ増加させることを「財・サービスを追加的に1単位ずつ増やす」
と言いますが、このとき2つの効果を生み出すことになります。



正の数量効果

生産量を増加させて、もう1単位追加的に販売することで、
その1単位の販売価格分だけ収入が増加する。







負の価格効果

生産量を増加させて、もう1単位追加的に販売することで、
企業は販売する財の価格を引き下げねばならない。







数量効果と価格効果の程度が異なる





これらの正の数量効果も、負の価格効果もどちらの作用も、
独占企業・寡占企業に発生するものです。


しかし独占企業と寡占企業では、市場に対する支配力が、
1社であるか、複数であるかの違いがあるために、効果の及ぶ範囲が異なります。




Japanese playing cards "HANA-FUDA" @ MARIO. / MIKI Yoshihito (´・ω・)









2013年10月17日木曜日

寡占の基本・複占について その2

寡占市場でも企業のやりたい放題ではない



前回、ある町におけるコーラの需要表を載せてみました。
この町のコーラの最大需要量は120,000ℓです。


コーラの需要表





その需要量にもとづき、C社とP社の2つの複占企業が、その供給を行っているとしましょう。
このとき、2つの企業はどのように生産量を決めるでしょうか?




カルテルと独占禁止法





「120,000ℓの生産量を2つの企業で分け合えばいいじゃないか!」
最初にこんな考えが思いつきそうですが、この考え方はアウトです。
この行為はカルテルとよばれ、独占禁止法における違反行為となります。



仮に独占禁止法の網をかいくぐったとしても、複占企業
自社の生産量を決めるにあたっていくつかの「経済学的難問」に突き当たります。




Japan Airlines Boeing 767-346ER (JA654J/40366/999) / contri





法律以外にもいろいろ問題が存在する





ではその「経済学的難問」とは何なのか?
それは価格を軸に置くか、生産量を軸に置くかで様々な問題が出現します。
ざっとまとめれば以下の通りです。



寡占企業が直面する「経済学的難問」








次回以降のシリーズでは、これらの「難問」について
ひとつずつ解き明かしていきたいと思います。



(「寡占の基本・複占について」シリーズ終わり)
















2013年10月11日金曜日

寡占の基本・複占について その1

寡占のもっとも単純なケース複占について



独占市場であれ、完全競争市場であれ、企業活動の最大の目的は、
利潤を最大化することです。しかも、その利潤を最大化させるための生産量は、
どちらの市場でも「目安」が存在し、「最適生産量ルール」と呼ばれています。



しかし、寡占の場合では、企業が「最適生産量ルール」に従って、
生産量を決定しても、 強調太字 必ずしも利潤最大化されるとは限りません。



ルールに従っても利潤が最大化できない状態は、人びとを悩ませ、
ここから共謀、カルテル、ゲーム理論、囚人のジレンマなどの、
有名な各概念が発達していきます。





Coco cola standing / koalazymonkey





複占企業とは?





では、なぜそのような「難問」が発生するのでしょうか?その発生する理由を、
寡占のもっとも単純なケースである複占を理解することで、求めることができます。
複占とは市場に2社の企業しか存在しない寡占のことを指し、それぞれを複占企業と呼びます。



例えば複占企業が、ある町のコーラの製造・販売業を担っているとしましょう。
その町でのコーラの需要表は、次のとおりです。



コーラの需要表







複占企業の行動






実際にコーラを製造・販売するためには、固定費用としてのは工場・機械設備・人件費や
変動費用としての水・炭酸・原液・砂糖などが必要です。



上の需要表はその各種費用の中でも、1単位当たりの追加費用は0として考えています。
少々、荒削りですが、最初の設備投資さえしてしまえば、コーラ1杯を追加で生産するのは、
「タダみたいなもん」として考えます。



そうすると、いくらつくってもタダなので、価格が0を上回る限り、
複占企業は、コーラを製造販売しつづけます。この例でいえば
コーラの総生産量が、60,000ℓになるまで、生産活動が続きます。








2013年10月10日木曜日

寡占とは その2

寡占の理由と具体例



前回は、寡占市場がどんなものであるかについて触れてみました。
ざっくり言ってしまうと、


  • 完全競争市場→多数の企業が同質の製品を販売してる
  • 独占市場→1つの企業が1つの製品を1つの企業が販売している


のそれぞれ中間的な市場の形態です。
強いていうなら、寡占市場は、独占市場を少し「弱めた」感じというものでしょうか?




寡占とは その2
Motorcycles [East Nanjing Road / Shanghai] / d'n'c





独占よりも規模の経済性が弱い寡占市場






例えば、地域の水道事業は、地方自治体が独占事業として行っています。
なぜ水道事業を地方自治体が、独占して行うかというと、
規模の小さな事業体が、バラバラに水道管や浄水場を設置すると
とてつもなく費用がかかるからです。



地方自治体のような大きな事業体が、水道事業を一手に引き受けると、
水道水の生産量を拡大させるにつれ、平均総費用が低下する現象が発生します。
このことを経済学では、規模の経済性といいます。



しかし、ここであげた水道事業の例はとても特殊な例です。
独占のように規模の経済性が働く財・サービスはそれほど多くありません。



独占よりも、「少し弱い」規模の経済性が働く市場のことを寡占市場と言い、
いくつかの具体例を挙げることができます。




寡占市場の具体例






寡占市場で販売される財・サービス、及びそれらを販売する企業には、
以下のような例があります。


  • ビール→アサヒビール、キリンビール、サントリー、サッポロビール
  • オートバイ→ヤマハ発動機、川崎重工業、スズキ、本田技研工業
  • ポリプロピレン→日本ポリプロ、サンアロマー、プライムポリマー、住友化学



Wikipediaで調べてみたら、他の財・サービスでも寡占市場の例
挙げられていますので、ご参考までにどうぞ!



(「寡占とは その2」シリーズ終わり)






2013年10月4日金曜日

寡占とは その1

寡占とそれに付随する概念について



しばらく、ミクロ経済学の学習をすすめていなかったせいか、
ネタ枯れが起きてしまっている…(汗



このまま枯らすわけにもいかないので、テキストを見ながら、
ネタを仕込み中です。今回のシリーズに関する仕込みは完了していませんが、
経過報告がてら、記事を更新しました。




人生ゲーム
人生ゲーム / strollers






中間的な市場である寡占市場





しばらくは、寡占について学習しようと考えています。
今まで当ブログでは、市場の中でも極端な2つのパターンについて、考えてきました。



  • 完全競争市場→多数の企業が同質の製品を販売してる
  • 独占市場→1つの企業が1つの製品を1つの企業が販売している



といってもこれらは、産業や企業の分析をするにあたって
理論的にあっても、現実の市場では、めったに見られるものではありません。
実際のところ、これらの「中間的」な産業や企業が存在します。


  • 独占的競争市場→多数の企業が差別化された製品を販売している
  • 寡占市場→少ない企業が1つの製品を販売している


※独占的競争市場については、まだ触れていません。そのうち書いてみます。




他にも不完全競争とか、ゲーム理論、囚人のジレンマとか





当ブログではしばらくの間、これら「中間的な」存在のうち、
寡占市場について取り上げていきます。



今はまだテキストを読み込んでいる最中なので、エラそうなことは言えませんが、
寡占市場に関して、以下の概念・考え方が関わってくるらしいです。



不完全競争、複占、共謀、カルテル、非協力的行動、
ゲーム理論、利得表、囚人のジレンマ。支配戦略、
ナッシュ均衡、戦略的均衡、独占禁止政策




などなど、それではしばしの間、お待ちを。