おちゃらけミクロ経済学: 2013

2013年12月24日火曜日

独占的競争とは その2

独占的競争の3つの条件



前回梅田阪急(通称:うめはん)にあるレストラン街を
例に引っ張ってきて、独占的競争の3つの条件について触れてみました。


  • 多数の競争相手
  • 差別化された製品
  • 長期の自由参入と退出


この独占的競争っていうネーミングは誰が付けたのかは、分かりませんが、
なかなか良いと思います。
「独占」と「競争」を「的」という、あいまいな言葉でつなぐなんて(笑)


3つの条件には、「独占」や「完全競争」の特徴が入り混じっています。
以下では、それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。





DSC_0322 / hetgallery




カレー屋さんで独占的競争





多数の競争相手

これは、完全競争市場の特徴ですね。
うめはんのレストラン街にもなると、ラーメンは多数の店が販売しています。
お昼時の競争となると、それこそラーメンもあればカレーもあるし、丼物もあります。
数えだしたらキリがありません。



差別化された製品

これは、独占市場の特徴ですね。
もし、あなたがカレーはカレーでもタイカレーのお店を出店し、
お客さんからの支持を得てしまえば、販売するカレーの値段は
ある程度自由に操作ができるようになります。
これは、独占企業が市場支配力を持つことと同じです。



長期の自由参入と退出

これは完全競争市場の特徴ですね。
長い目で見れば、あなたがオープンさせたカレー屋さんのあとに、
インドカレーで差別化した別のお店が、テナントとしてやってくるかもしれません。
また、ひょっとしたら、あなた自身が儲からないと思って、うめはんを去ることに
なるかもしれません。



次のシリーズでは製品の差別化について突っ込んでいきましょう!



(「独占的競争とは」シリーズおわり)







2013年12月23日月曜日

独占的競争とは その1

独占でも完全競争でもないハイブリッドな市場




今まで当ブログでは、すでに3つの市場構造に見てきました。






今回のシリーズは、この3つの市場構造のうち、どのタイプにも
当てはまらない、独占的競争という市場構造について、考えていきます。




DSC_0292 / hetgallery








とても現実的な市場構造




独占的競争は、どれタイプにも当てはまらないと書いてしまいましたが、
現実の世界がとてもよく描写されています。
独占市場や、完全競争市場の特徴が、ハイブリッドに混ざっているためです。



管理人が、20分くらい電車に乗って大阪市内に足を延ばすと、
梅田阪急(通称:うめだはん)があります。身近な例を出すと
そこのレストラン街はちょうど、独占的競争の世界です。



仮にあなたがそのレストラン街においしいラーメンの店を出店しようと、
考えているとしましょう。



他にもラーメンを出す店はありますが、その店とまったく同じ値段か、
それ以下の値段でないと売れないかと言われればそうではありません。



提供するラーメンの特徴や広告の方法を考え、お客さんに
他のラーメンとは違うことをアピールできれば、
少々値段が高くても売ることはできます。




独占的競争の条件





とまあ、独占的競争の身近な例を百貨店のレストラン街を使って
ごく簡単に説明してみましたが、独占的競争には3つの条件があります。


  • 多数の競争相手
  • 差別化された製品
  • 長期の自由参入と退出


これらの3つの条件にはそれぞれ、
独占市場や完全競争市場の特徴が、入っています。


(つづく)










2013年12月19日木曜日

寡占市場~製品差別化への道 その2

価格戦争から製品差別化へ



前回、暗黙の共謀が、さまざまな理由のため、
なかなか成立しないことを説明しました。
そうなったときに、寡占企業が取る手段は、主に2つあります。


  • 価格戦争
  • 製品差別化


前回、説明した価格戦争とは、売り手同士が互いに相手を市場から
ビジネスを叩き出すために、裏切りや非協力的な行動に罰を与えるものです。





For Sale / oatsy40





消費者に違う「何か」を訴える





といっても戦争ばっかりやっていると、仁義なき戦いみたいになって、
寡占企業の体力が疲弊することは、想像に難くないでしょう。



注目するのはライバルの生産者ではなく、お客さんとなってくれる消費者です。
消費者は、必ずしも自社の製品とライバル社の製品を同一に考えるわけではありません。



そこで企業が、自社の製品と他社の製品は異なる買い手に、
納得してもらおうとしているとき、その企業は製品差別化を行っていると言います。




製品差別化と独占的競争





寡占企業が行う、製品差別化の具体例を挙げると次のようなものがあります。



  • おまけをつける
  • パッケージのデザインを変える
  • TVやインターネット上で広告活動する
  • 多数の営業マンを使って販促活動をする。



市場や製品によっては、かつて寡占市場のそれであったものが、
次第にそうではなくなるケースもあります。



次回のシリーズでは、この製品差別化とそれにまつわる、
独占的競争について考えていきましょう。


(「寡占市場~単一の財から製品差別化へ その2」シリーズ終わり)








2013年12月18日水曜日

寡占市場~製品差別化への道 その1

暗黙の共謀の破綻→価格戦争



これまでいくつか単純な寡占市場について例を見てきました。
いずれも市場には2つの企業しかなく、単一の財を扱うものとするものです。






そのため、共謀は独占禁止法に触れるので、やらなかったとしても
共同で利潤を増加させるためには、暗黙の共謀を実現してしまうかもしれません。





The Arctic Council observers meeting 02 / PolandMFA





ホントは実現が困難!?~ 暗黙の共謀





ですが、現実の市場には様々な要因が絡み合い、暗黙の共謀はなかなか実現しません。
実現しない要因は大体、次のようなものです。


企業数の多さ

企業数が多くなればなるほど自らの行動が他企業の利潤に与える影響を考慮に入れて
協調的な行動を取るインセンティブは小さくなる。


製品と価格設定の複雑さ

例ではただ2つの企業と単一の財を取り扱っていることにしていましたが、
実際に寡占企業が何千種類もの財を販売することは珍しくありません。
そうなるとライバル社の生産や価格設定を調査することは容易ではない。


利潤の不一致

例では、ともに限界費用がゼロであるという前提でしたが、実際には
寡占企業間の限界費用は異なり、利潤を最大化するための生産量を
暗黙のうちに分け合うのは困難。




仁義なき「経済の戦い」~価格戦争





というわけで、現実には暗黙の共謀というものは、実現するのが大変困難です。
共謀が破綻して、価格戦争が起きることもしばしばです。



価格戦争とは、囚人のジレンマの「自白」や、
しっぺ返し戦略の「常に裏切り」を仕掛けるようなものです。



単に非協力的な水準への急落であることもあれば、
それすら下回るような価格で売り出すこともあります。




(つづく)







2013年11月29日金曜日

寡占市場~繰り返しゲーム その4

しっぺ返し戦略が意味するところとは?



前回では、しっぺ返し戦略利得表が登場しました。
しっぺ返し戦略とは、1回こっきりではなく、
2回以上の長期的な視点に立ったゲームだと思ってください。



ただ、2×2の利得表にまとめられることは、
1回こっきりのゲームである囚人のジレンマと同じです。


しっぺ返し戦略








しっぺ返し戦略を分析





この4つのハコからなる利得表を箇条書きにすると、4つの場合分けができます。
記事を読んでいただいた皆さんは、C社の社長の立場に立ったつもりでお読みください。


1.両社ともに「しっぺ返し」をプレー。両社は180万円の利潤を得る


しっぺ返し戦略(1)




2.P社が「常に裏切る」をプレー、C社は「しっぺ返し」をプレー。
C社は最初の年は200万円の利潤を得られるが、翌年は160万円の利潤しか得られない。


しっぺ返し戦略(2)





3.P社が「しっぺ返し」をプレー、C社は「常に裏切る」をプレー。
C社は最初の年は150万円の利潤しか得られないが、翌年は160万円の利潤を得る。


しっぺ返し戦略(3) 





4.両社ともに「常に裏切る」をプレー。両社は160万円の利潤を得る


しっぺ返し戦略(4) 





しっぺ返し戦略が説く教訓




これらの分析から得られる教訓とは、もし寡占企業同士が長期にわたって、
競争を行うならば、各企業は、ライバル企業を助けるために生産量を制限し、
そのライバル企業の利潤を増加させるように行動することです。
このことを暗黙の共謀と言います。



ライバル企業を助けるなどということは、一見矛盾するようにも聞こえます。
しかし、この暗黙の共謀は、まるで生産量を制限するための正式な共謀が、
あるかのごとく実現します。




Global Water Partnership Global Strategy: 2020 Vision_11 / worldwaterweek





(「寡占市場~繰り返しゲーム」シリーズおわり)








2013年11月28日木曜日

寡占市場~繰り返しゲーム その3

しっぺ返し戦略も利得表に落とし込める!



前回では、しっぺ返し戦略について、
旧約聖書に出てくるような「目には目を歯には歯を」という
言い伝えになぞらえて説明してみました。



しっぺ返し戦略とは、最初は協力的にプレーし、
その後は他のプレーヤーが前の期にとった行動を、
そのまま実行するというゲーム理論の一種です。




Naval War College Current Strategy Forum: Energy and US National / U.S. Naval War College





しっぺ返し戦略と囚人のジレンマの比較





具体的に、プレーヤーはどうするかというと、
次のいずれかのプレーを選択することです。


  • 1年目は「裏切り」、2年目も「裏切り」
  • 1年目は「協力的」、2年目は相手の出方次第



同じくゲーム理論の一種である、囚人のジレンマは、
1回こっきりのプレーであるのに対し、しっぺ返し戦略はゲームを2回行い、
プレーヤーの視点が、長期的であることが特徴的です。




2年分の行動を1つのゲームプレーとみなす




  • 囚人のジレンマ→1回こっきりのゲーム→短期的視点
  • しっぺ返し戦略→複数回のゲーム→長期的な視点



両者を比べてみると、ゲームの回数が異なったり、視点の長さが異なったりしますが、
しっぺ返し戦略の状況も、囚人のジレンマと同じく利得表で分析することが可能です。



しっぺ返し戦略








それぞれの利得は、1年ではなく、2年を視野に入れて計算してますから、
少し見方がややこしいですね~。次の記事でそれぞれ順を追って見ていきましょう。


(つづく)











2013年11月22日金曜日

寡占市場~繰り返しゲーム その2

しっぺ返し戦略とは?



たまに「私企業、民間企業は目先の利潤にとらわれている」という言い方を
聞くことがあります。この言い方の意味するところは、千差万別で
それぞれの方にとって解釈するところが違うでしょう。



しかし、上手く設計された寡占市場で、繰り返しのゲームをしている
寡占企業に限って言えば、「目先の利潤にとらわれている」なんてことはありません。



彼らは短期的な利潤よりも長期的な利潤を重視します
そのことをミクロ経済学では戦略的行動と言います。





Bible / Sean MacEntee




ゲームを繰り返すと戦略的行動に




前々回のシリーズで登場したコーラの需要表を思い出してみましょう。



コーラの需要表






これは1回こっきりのゲームを行ったときの分析をするための利得表でした。
で、今回の記事のポイントは戦略的行動なので、具体的にはゲームを2回行うものと考えます。
(実際は3回以上なんだろうけど、最も単純な戦略的行動を説明するためということで…)



そして、2つの企業の立場で考えるとややこしくなるので、
この記事を読んでくださっている方は、今自分がC社の立場であるとしましょう。




「目には目を歯には歯を」





C社の社長が考える戦略的行動とは、次の2つが考えられます。



  1. 1年目は40,000ℓを生産し、2年目も40,000ℓを生産する
  2. 1年目は30,000ℓを生産し、2年目は相手の出方次第



このC社の戦略的行動を囚人のジレンマ風に言いかえると、
次のようになりますかね。



  1. 1年目は「裏切り」、2年目も「裏切り」
  2. 1年目は「協力的」、2年目は相手の出方次第



2.の「2年目は相手の出方次第」というところが、戦略的行動のポイントですね。



  • もし相手のP社が1年目に「協力的」であれば、C社の2年目は「協力的」に。
  • もし相手のP社が1年目に「裏切り」であれば、C社の2年目は「裏切り」に。



なんだか旧約聖書の「目には目を歯には歯を」という言い伝えのようですが、
このような戦略的行動のことを特に、しっぺ返し戦略といいます。


(つづく)







2013年11月21日木曜日

寡占市場~繰り返しゲーム その1

目先のおカネにとらわれない寡占企業



前回のシリーズで登場した囚人のジレンマでは、
警察にとっ捕まった容疑者達にとって、黙秘をするか、相手を裏切って自白をするかは、
1回こっきりのゲームでした。



司法取引の場合なんかは、そうですよね。
そう何度も共同で犯罪を犯すことってないですもんね(たぶん)


囚人のジレンマ






しかし実際には、ゲームが1回こっきりで終わるなんてことは、あまりないと思います。
何年も同じ市場にいる寡占企業同士であると、何回もゲームをすることになります。




Global Water Partnership Global Strategy: 2020 Vision_6 / worldwaterweek





短期的な利潤より長期的な利潤





1回こっきりの単純なゲームであると、自分が取るべき方針はこれにつきます。



  1. 「相手の行動を見てから自分の行動を決める!」
  2. 「相手の行動が分からない時は、最悪のパターンにはまらないようにする」



1.ができていると利潤を最大化できます
2.ができていると最悪の利潤ではなく、2番目に悪い利潤は得られます。



しかし、ゲームを何回も繰り返しすることが分かっていると、
寡占企業は1回こっきりの短期的な利潤ではなく、
複数回のゲームで得られる長期的な利潤を重視するようになります。



戦略的行動とは




このように長期的な利潤を重視する企業の行動を戦略的行動と言います。
話のオチから言ってしまうと、戦略的行動がが意味するところは、
寡占企業は、あたかも共謀のための正式な協定があたかも存在するかのごとく、
行動してしまう
ということです。



「何でそうなんねん!共謀ってやったらあかんのとちゃうんけ?」
と思われた方がいるかもしれません。



でもそうなるんですよね~(少なくとも教科書レベル(リンク)では)
ただ、その過程は結構、複雑だったりしますので、少しずつ読み解いていきましょう



(つづく)



















2013年11月15日金曜日

寡占市場~囚人のジレンマ その2

実は自分は相手に「支配」されている



前回、利得表を用いて囚人のジレンマについて考えました。



囚人のジレンマ









容疑者A:

「Bが自白するか黙秘をするかはわからん。仮にヤツが自白して
オレ様が黙秘を貫いてしまったら10年の懲役をくらっちまう。
そのことを考えれば、オレ様は自白をしてしまった方が、最悪でも5年の懲役でもすむ」


容疑者B:

「Aが自白するか黙秘をするかはわからんないわ。仮に彼が自白して
アタシが黙秘を貫いてしまったら10年の懲役を言い渡されるわよ。
そのことを考えれば、アタシが自白をしてしまった方が、最悪でも5年の懲役でもすむ」





網走刑務所 / achappe_tmic





相手の行動を考えたのち自らの行動を決める





このように容疑者AとBにとって「自白」か「黙秘」かのゲームの結論は、
両者ともに「自白」ということになりますが、このことを経済学では、支配戦略と言います。



一般的な言い方をすると、支配戦略とは、他のプレーヤーが
どんな行動を選択しようと、ある行動が最適な行動であることを言います。



容疑者達にとって、相手が「自白」をしようが、「黙秘」をしようが、
「自白」をすることが、懲役10年という最悪の事態を避けられるからです。



ゲーム理論の均衡→ナッシュ均衡




A,B両容疑者が「自白」をしたとき、ゲームは均衡に達したことになります。
この例のように、相互依存の状況にある経済主体がそれぞれ、相手の選んだ戦略を
所与として、自己の最適な状況を選んでいることを、ナッシュ均衡と言います。



ちなみに「ナッシュ」とは数学者でノーベル経済学賞受賞者でもある、
ジョン・ナッシュにちなんでいます。下記の参考文献は、彼の伝記を
取り扱った内容で、映画化もされています。



(「寡占市場~囚人のジレンマ」シリーズ終わり)



【参考文献】


ビューティフル・マインド 天才数学者の絶望と奇跡











2013年11月14日木曜日

寡占市場~囚人のジレンマ その1

合理的に考えると刑務所暮らしが長くなる?



ミクロ経済学を学習している方も、学習していない方も、
「囚人のジレンマ」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
「囚人のジレンマ」とは、ゲーム理論のモデルの1つで、次のような特徴を持ちます。



各プレーヤーは、他のプレーヤーがどんな行動をとろうが、
裏切るインセンティブを持つ。他のプレーヤーの犠牲のもとに
自らの便益を得るような行動を取る。



各プレーヤーがともにそれぞれの便益と反する行動を取ると、
それぞれの利得は減少する。





網走刑務所博物館 / sendaiblog





自分の利得を考えて利得が減る?





その囚人のジレンマを利得表で表すと、次のような感じになります。
(テキストによっては黙秘と自白の順番が異なるかもしれないが、意味は同じです)



囚人のジレンマ






もっとも囚人のジレンマは、ゲーム理論の一種であるといいながらも、
結論は決まっています。必ず、どちらの囚人も「自白」をします。
この理由をそれぞれの囚人の立場に立って考えてみましょう。



「自白」することが支配戦略




容疑者A:

「Bが自白するか黙秘をするかはわからん。仮にヤツが自白して
オレ様が黙秘を貫いてしまったら10年の懲役をくらっちまう。
そのことを考えれば、オレ様は自白をしてしまった方が、最悪でも5年の懲役でもすむ」


容疑者B:

「Aが自白するか黙秘をするかはわからんないわ。仮に彼が自白して
アタシが黙秘を貫いてしまったら10年の懲役を言い渡されるわよ。
そのことを考えれば、アタシが自白をしてしまった方が、最悪でも5年の懲役でもすむ」



このように容疑者AとBにとって「自白」か「黙秘」かのゲームの結論は、
両者ともに「自白」ということになります。


(つづく)







2013年11月8日金曜日

寡占市場~相互依存の状況と利得表 その3

利得表の分析で分かること



前回は、「ゲーム理論」における「囚人のジレンマ」について
説明する一歩手前として、簡単な経済モデルにもとづいた
「ゲーム理論」を利得表を作ったところで終わりました。



利得表







利得表の分解





この4つのハコからなる利得表を箇条書きにすると、4つの場合分けができます。


  1. 両社ともに30,000ℓを製造・販売
  2. P社は30,000ℓ、C社が40,000ℓを製造・販売
  3. P社は40,000ℓ、C社が30,000ℓを製造・販売
  4. 両社ともに40,000ℓを製造・販売


この4つの場合分けから得られる、両者の利得(利潤)は次のようになります。



1.両社ともに1,800,000円の利潤


利得表(両社ともに30,000ℓを製造・販売)






2.P社は1,500,000円、C社が2,000,000円の利潤


利得表(P社は30,000ℓ、C社が40,000ℓを製造・販売)





3.P社は2,000,000円、C社が1,500,000円の利潤


利得表(P社は40,000ℓ、C社が30,000ℓを製造・販売)







4.両社ともに1,600,000円の利潤


利得表(両社ともに40,000ℓを製造・販売)






利得表の要約





この利得表から得られる一般的な教訓は、以下の通りです。



  • 両社が低い生産量を選択すれば高い利得(利潤)得られるのに、高い生産量を選択してしまう
  • 高い生産量を選択してしまうのは、もし相手が低い生産量を選択したときに、より大きな利得(利潤)が得られるから
  • 自分の行動は、自分の意思のみで決定するのではなく、相手の行動を見てから決定することになる。





new cola / mtsuruta





(「寡占市場~相互依存の状況と利得表」シリーズ終わり)
















2013年11月7日木曜日

寡占市場~相互依存の状況と利得表 その2

利得表は相互依存の状況を説明する



前回、「囚人のジレンマ」ではなく、その前の一歩手前として、
経済モデルによる簡単な「ゲーム理論」について利得表を用いて言ったので、
それをやりましょう。



イメージするのは、いつぞやのシリーズで登場した
ある町で、コーラの生産・販売にかかわる寡占(複占)市場です。





Coca Cola Collection / The Next Web





複占市場の需要表





確かその町でのコーラの需要表は、こんな感じでしたね。
総需要量が60,000ℓのときに、総収入(総利潤)が360.000円で最も大きくなります。



つまり、この町でコーラの製造・販売を担っている複占企業の
P社とC社は、合計で60,000ℓを供給すれば、
複占市場としての利潤を最大化できることになります。



コーラの需要表





利得表は相互依存の状況を説明する





じゃあ、2つの企業で30,000ℓずつを仲良く分け合って、供給すればいいのでは?
と、考えてしまうかもしれませんが、なかなかそうはいきません。



どうしても、寡占(複占)市場では両者ともに抜け駆けをして、
より多くの生産を行おうとしてしまいます。(理由はコチラ)



この、複占企業のジレンマを分かりやすく、一目で説明できるのが
4つのハコからなる利得表です。詳しいことは、次回のブログで説明しましょう。



利得表



















2013年11月6日水曜日

寡占市場~相互依存の状況と利得表 その1

ゲーム理論、キホンのキホン



前回のシリーズでは、寡占市場のベルトラン行動について考えてみました。
ベルトラン行動とは、次のような考え方です。



寡占市場における企業が他の企業の価格を所与として、
自社の利潤を最大化するように価格を決定すること。



くだけた言い方をすると、ライバル会社が出す値段を決めてから、
自分の会社で販売する商品の値段を決めるというところでしょうか。



不景気なときで、企業の供給能力が過剰なときに、
よく行われる「値段の切り下げ合戦」とも言えると思います。




Tokyo Game Show 2008 / kanegen






ゲーム理論のキホン→「相手の行動を見てから決める」





この「値段の切り下げ合戦」とも言えるベルトラン行動は言い換えると
相手の出方を見て、自分の行動を決めるということになります。
これを相互依存の状況にあると言い、寡占企業は「ゲーム」をプレーしていると言います。



相互依存の状況とゲームの理論






ここで「ゲーム」という言葉を使いましたが、
勘の良い方は、お気づきになったかもしれません。
そうです。この「ゲーム」は、あの「ゲーム理論」で有名な「ゲーム」です



で、その「ゲーム理論」の中でも最も有名な例の1つが、
「囚人のジレンマ」ですね。このモデルも、当ブログを読んでくださる方であれば、
名前を聞いたことがあるかもしれません。





利得表とゲーム理論





ここまで当ブログの話の流れとして、



寡占市場→ベルトラン行動→相互依存→ゲーム理論→囚人のジレンマ



と来ているので、次は囚人のジレンマをやってもいいんですが、
これは、ぶっちゃけ「司法取引」の例なので、話が経済学ではない違う
方向に飛んでしまうかもしれません。



したがって、次回では経済モデルにもとづいた利得表を使って、
相互依存の「ゲーム」のお話をしてみましょう。





【参考文献】


ビューティフル・マインド 天才数学者の絶望と奇跡











2013年10月31日木曜日

寡占市場でのもうけ方 その2

生産量の比較と差別化した商品で勝負!




前回、寡占市場における企業が、法律に違反することなく、
どうやったら利潤最大化を図れるかを考えたら、2つの考え方に行き当たりました。



前者を数量競争、別名クールノー行動と言い、
後者を価格競争、別名ベルトラン行動と言います。


クールノー行動とベルトラン行動







クールノー行動とは?




クールノー行動とは各企業が、他社の生産量を所与として
自社の利潤を最大化するように生産量を選ぶことを指します。




例えば、JR線と並行して走っているような電鉄会社をイメージしてみましょう。
もしあなたが私鉄の社長であれば、先にJRが1年間に走らせる電車の
運行本数を決めてしまえば、JRの運輸量は確定しているとみなせるでしょう。



あなたは、JRの運輸量を決まったものとして、自社の鉄道に電車を
何本走らせるか決めることによって、自社の利潤を最大化できるようになります。



クールノー行動によってやみくもに電車を走らせて、運輸価格の値崩れが発生し、
損失が発生することを防ぐことができます。






JR奈良站 / Richard, enjoy my life!




ベルトラン行動とは?





企業が他の企業の価格を所与として、自社の利潤を最大化
するように価格を決定するときベルトラン行動(価格競争)と呼びます。




例えば、不況になった場合の航空業界を考えてみましょう。
不況前の羽田‐関空便が、片道料金1万5千円だったとします。



不況になると、1万5千円というチケット代では、売れ残りが生じ、
航空会社であるJ社やA社の供給能力に余剰が生じます。



そこで各航空会社は、空席だらけの飛行機を飛ばすよりも、
少しでも座席を埋めて、飛ばしたがりますので、料金の切り下げが始まります。



ただし、この「料金の値下げ合戦」は、価格を限界費用ギリギリにまで
落とすことになるので、結局は超過利潤が発生しない、完全競争になってしまいます。



もっとも、このような超過利潤が発生しない状態は、
どの企業も避けたいところなので、価格だけで勝負するのではなく、
食事や時間帯、席などに差をつけ、同質化された航空サービスに差をつけようとします。




ANA B777-281 (JA711A "StarAlliance") @ HND/RJTT / Hyougushi





2013年10月30日水曜日

寡占市場でのもうけ方 その1

価格をいじると、利潤の機会が増える



前回のシリーズでは、寡占企業がどうやったら、
利潤の最大化を図れるかを考えてみました。



寡占企業が直面する「経済学的難問」 (共謀と非協力的行動)






赤線で囲ったところが、前回のシリーズのポイント。



寡占市場の企業が、利益を最大化させるためには、
寡占企業同士で話し合って生産量を調整する方法が考えられます。
しかし、これはカルテルと呼ばれる行為で独占禁止法に抵触します。




Toshiba HD-EP30 and Sony DVD Recorder / William Hook




取決めしなくてもできる寡占企業の利潤最大化





では、寡占企業は利潤の最大化を図る機会がないのかと言われれば、
そんなことはありません。共謀をしているケースは市場価格を一定
としたときに、行いますので、その市場価格が変動することになれば、
利潤を最大化させる機会が現れます。



寡占企業が直面する「経済学的難問」 (クールノー行動とベルトラン行動)






青線で囲ったところが、今回のポイント。




クールノー行動とベルトラン行動





で、市場価格が変動する寡占市場を前提として、さらに条件が2つに分かれます。


  • 生産量がすでに決まっている場合
  • 生産量が予め決まっていない場合



クールノー行動とベルトラン行動




  • 前者を数量競争、別名クールノー行動と言い、
  • 後者を価格競争、別名ベルトラン行動と言います。



2013年10月25日金曜日

寡占市場~共謀と非協力的行動 その3

「正式でない」共謀も存在する




産業全体で利潤が減少するとしても、寡占企業は独占企業よりも
生産量を増加させるインセンティブを持ちます。



生産量を増加させると、財の価格は下がります。
その負の価格効果は、独占企業1社がすべての財について、
引き受けけなければないのに対して、2社以上の寡占企業は、
自分のところの財の価格だけを下げればいい、と考えるからです。



寡占企業1社分の財の価格を引き下げることは、独占企業が
価格を引き下げることよりも影響が小さくみえるます。
そのため寡占企業は、自社の利益だけを追求する非協力的行動
出ることが考えられます。




Cherry Cola / pmsyyz





「正式な」共謀→独占禁止法違反






しかし、改めてコーラの需要表を見ると、寡占企業(複占企業)同士で
生産量を調整した方が、産業全体の利益は大きくなります。


コーラの需要表





従って、寡占企業は共謀することについてインセンティブを持つことになります。
しかし、「正式に」共謀を持つことは、独占禁止法のカルテルに抵触します。
関係者は、公正取引委員会から呼び出され、疑惑の目でにらまれることになるでしょう。




共謀か?非協力的行動か?





それでは、「正式な共謀」ができない寡占企業にとって、カルテルは不可能で、
非協力的行動によって、生産競争を繰り返すしかないのでしょうか?



もちろん、独占禁止法を無視して、こっそりとカルテルを推し進める場合もありますが、
「正式な」取決めがなくても、共謀を実施することはできます。
それは、市場価格にこだわらず、生産物を販売する場合です。


寡占企業が直面する「経済学的難問」








(寡占市場~共謀と非協力的行動」シリーズ終わり)

2013年10月24日木曜日

寡占市場~共謀と非協力的行動 その2

独占は1社、寡占は2社以上、だから…



独占企業が追加的に財を1単位多く生産することは、
以下の2つの作用を生み出します。


正の数量効果

生産量を増加させて、もう1単位追加的に販売することで、
その1単位の販売価格分だけ収入が増加する。





負の価格効果

生産量を増加させて、もう1単位追加的に販売することで、
企業は販売する財の価格を引き下げねばならない。






独占企業の需要曲線と限界収入の関係を見ると、
限界収入がマイナスになってしまうので、
独占企業の場合、おのずと「作りすぎ」に歯止めがかかります。





Coca-Cola-Sprite-Fanta-Can__14647 / Public Domain Photos





寡占企業が生産物の数量競争をする理由とは?





寡占企業も独占企業と同様に、正の数量効果と負の価格効果を発揮します。
ところが、寡占企業の場合、自社の生産物に対する、負の価格効果には、
関心を示しますが、寡占企業は市場支配力が弱く、他社のそれには、無関心です。



従って、寡占市場の各企業は、生産量増加による負の価格効果よりも、
正の数量効果の影響が強く認識されてしまいます。




生産量を増加させることで、寡占市場全体で利潤が減少するとしても、
それぞれの寡占企業には、生産量の増加が利潤を生むように、思えてしまうのです。


コーラの需要表