おちゃらけミクロ経済学: 12月 2012

2012年12月24日月曜日

利潤最大化と費用その8

利潤と最小費用生産量の関係



前回のブログでは、信長くんのソフトクリームビジネスにおいて、
平均固定費用、平均可変費用、平均総費用の散布図を作成しました。
今回のブログでは、その散布図にさらに限界費用を加えてみましょう。


3つの費用と限界費用





この散布図で特に注目する点は、従業員数3人のときの生産量です。
このときの生産量を、最小費用生産量といいます。
最小費用生産量には、次の3つの特徴があります。


  1. 最小費用生産量の生産→平均総費用 = 限界費用
  2. 最小費用生産量より生産少→限界費用 > 平均総費用
  3. 最小費用生産量より生産多→限界費用 < 平均総費用


そもそも、企業が目的としている利潤は、総収入から総費用を控除して
求めることになっています。



すると、この散布図を見ると、平均総費用と限界費用が交わる点が、
利潤が最も大きくなる点
ということが分かります。
もちろん、このときの利潤が最も大きくなる点とは、生産設備などが、
常に一定であることが条件です。


費用の概念と測り方まとめ



今回の「利潤最大化と費用」シリーズでは、
「費用」と名のつくものがたくさん出てきました。



それぞれのビジネスで「儲け」を出すためには、
費用概念を区別した上で、その特徴を押さえておくことは、
大変重要なので、表にまとめておきます。



費用の概念と測り方


費用の概念と測り方


利潤最大化のための「他の方法」



それでは、信長くんのソフトクリームービジネスにおいて、
利潤の最大化を図るためには、従業員を3人にして生産個数を
540個にしておき、あとは何もすることはないのでしょうか?



答えは、もちろんそうではありません。
利潤をさらに大きくするためには、主に次の4つの施策が考えられます。


  1. ソフトクリーム製造機や冷蔵庫などの生産設備を増やす
  2. 販売価格を上げる
  3. 周囲の同業者の出店を差し止める
  4. 店の周りでチラシをまくなどして、営業・広告をうつ


冷蔵庫

赤牛冷蔵庫 / TACKTY


どの方策も、一見すると当たり前のような施策のように見えます。
しかし、実は、どの施策も、ミクロ経済学的の理論によって、裏付けれた施策です。
次回のブログでは、4つのうちの、1について、考えてみましょう。
(「利潤最大化と費用」シリーズおわり)



【関連エントリ】


利潤最大化と費用その1
利潤最大化と費用その2




2012年12月20日木曜日

利潤最大化と費用その7

平均総費用→拡散効果+限界収穫効果



前回のブログでポイントとなる、概念は以下の3つです。

  1. 平均固定費用
  2. 平均可変費用
  3. 平均総費用(平均費用)

この中で特に、ビジネス上の「儲け」を出すために、重要な概念となるのが、
3番目の平均総費用です。まずは、前回のブログでの問題の答えを出しながら、
平均総費用の概念について把握しましょう。



問題の解説


【問1】


限界費用と平均総費用の違い問1答え


限界費用と平均総費用の違い



それぞれの概念を簡単な数式で表すと、次の通りです。


  1. 平均固定費用=固定費用÷生産量
  2. 平均可変費用=可変費用÷生産量
  3. 平均総費用=平均固定費用+平均可変費用

【問2】


限界費用と平均総費用の違い問2答え





【問3】


平均総費用が最小になるのは、ソフトクリームを540個生産したとき。
(従業員を3人にしたとき)



答えの解説



3つの費用概念の特徴を表すと、次のようになります。
作成したグラフと合わせてお読みください。

  • 平均固定費用→拡散効果

生産量が増加するにつれ、最初の固定費用を分担しあっている。


  • 平均可変費用→収穫逓減効果

生産量が増加するにつれ、追加的な生産物をつくるのに、
必要な投入物が増えている。

  • 平均総費用→拡散効果+限界収穫逓減効果

拡散効果と、収穫逓減効果とが、それぞれ逆効果を及ぼしている。
(収穫逓減効果について詳しい説明はコチラ)



生産量が少ない時は、拡散効果が強く働き、平均総費用は下がっていきます。
しかし、生産量が増加するにつれて、拡散効果よりも、限界収穫逓減効果が強く働き、
平均総費用は上がっていきます。





儲けのピーク

successful business woman on a laptop / Search Engine People Blog



つまり、平均総費用は、「ある一定」のところで減少から上昇に転じます。
この「ある一定」のところが、「儲けのピーク」といわれるところであり、
ビジネスを続けていく上で、とても重要な概念となります。
(つづく)



【関連エントリ】
                                                                                         
限界収穫逓減の法則その2








2012年12月13日木曜日

利潤最大化と費用その6


限界費用と平均総費用(平均費用)について



利潤最大化と費用その5
利潤最大化と費用その4



では、それぞれ費用をはかる概念として、
総費用限界費用という概念が登場しました。



今回のブログでは、平均総費用という概念について考えてみましょう。
単に、平均費用と呼ばれることもあります。



平均総費用限界費用は、一見すると似たような概念に、
見えるかもしれません。しかし、両者の概念はまったく異なります。



平均総費用→生産物1単位につき生産費がいくらかかっているかを示す費用
限界費用→→さらにもう1単位生産するのにかかる費用



と、文字だけで表現しても分かりにくいと思います。
従って、問題形式で考えていきましょう。




信長くんのソフトクリームビジネス(その3)




信長くんは、自分でソフトクリームのお店を営業しています。
ソフトクリームの生産量や、従業員の賃金など生産するための条件は、


利潤最大化と費用その4
利潤最大化と費用その2


のときと同じです。




ソフトクリームビジネス

ボーイ アンド ガール boy and girl / "KIUKO"


基本問題の確認



【問1】



下の図にもとづき、ソフトクリームの各生産について、
平均固定費用、平均可変費用、平均総費用を算出しましょう。



限界費用と平均総費用の違い




限界費用と平均総費用の違い



ヒント:ピンク色の各費用の部分を、ソフトクリームの生産個数で割り算をします。




【問2】


平均固定費用、平均可変費用、平均総費用をグラフに書き込んでみましょう。






ヒント:問題文のワークシートの、可変費用と総費用を取り出して、グラフを作成しましょう。



応用問題にチャレンジ!



【問3】


平均総費用が最小になるのは、ソフトクリームを何個生産したときか?





ヒント:平均総費用は、生産量の少ない時は減少しますが、ある一定の生産量で上昇します。
(問題の解答はコチラ!)





2012年12月10日月曜日

利潤最大化と費用 その5


問題のおさらい



前回のブログでは、3つの問題を出題しました。
問題のポイントは、以下の通りです。

  1. 問1 総費用と可変費用の計算
  2. 問2 総費用と可変費用の計算
  3. 問3 限界費用の計算(追加で1個多く作ったときの費用の計算)

基本問題の確認



【問1】答え


信長くんのソフトクリームビジネス 可変費用と総費用 問1答え





  • 220個のとき
可変費用→19,000円
総費用→29,000円


  • 400個のとき
可変費用→36,000円
総費用→46,000円




応用問題の確認



【問2】答え


信長くんのソフトクリームビジネス 可変費用と総費用






答えのグラフは、問1の表ににもとづき、可変費用の合計と、総費用にのみに要約した表です。


【問3】答え









限界費用とは、それまでの1単位を多く作ったときに、発生する費用のことを指します。


  • 220個をつくるときの限界費用→19,000円
  • 400個をつくるときの限界費用→17,000円


答えの解説



【問1】



ひとくちに「費用」といっても、ミクロ経済学では、いくつかの種類があります。
まずは、総費用=固定費用+可変費用、という具合に理解しましょう。




【問2】



総費用には、固定費用が含まれているため、
労働投入量が0のときでも、0にすることはできません。
グラフが、原点からスタートすることはありません。



ソフトクリームの売り上げが発生する前に、製造機や冷蔵庫、
土地などを購入する費用が、すでに発生しています。



可変費用の合計は、労働投入量と正比例します
従業員数が0のときは、費用も0になるため、グラフ上では、原点からスタートします。




【問3】



従業員数が1人のときは、0人のときに比べて、
ソフトクリームを220個作るために、19,000円の追加的費用が、発生しています。



従業員数が2人のときは、1人のときに比べて、
ソフトクリームを400個作るために、17,000円の追加的費用が、発生しています。



問3の答えを見ると分かるように、従業員数が増えれば増えるほど
(ソフトクリームを作ればつくるほど)、限界費用は、少なくなっていきます。

限界費用は、少なくなるということは、1個当たりの単価が、下がることを意味します。



つまり、ソフトクリームの販売単価を下げない限り、
信長くんのビジネスは、「儲かる仕組み」ということになります。





できるビジネスマン

It's hard, being a business man. / Banjo Brown




ただし、「儲かる仕組み」といっても、「ある一定」の生産のところまでです。
次回以降のブログでは、信長くんのビジネスにおける、「儲けの限界点」を考えてみましょう。

(つづく)