おちゃらけミクロ経済学: 限界収穫逓減の法則その4

2012年11月17日土曜日

限界収穫逓減の法則その4


百貨店外商と限界収穫逓減の法則



前回のブログで、個人的体験にもとづき、
百貨店の外商営業と、限界収穫逓減の法則の関係を、書かせていただきました。



未開拓の顧客層に営業をかけた当初は、生産量(売上)の伸び率は、すさまじいものです。
しかし「掘り起こし」が行きわたると、生産量(売上)の伸び率は、鈍化します。



厳しい限界収穫逓減の「現実」




限界収穫逓減の法則その1では、かつてIBM社でソフトウェアの開発を担当していた、
フレデリック・ブルックス,Jrが、登場しました。




そのブルックス,Jrが示した限界収穫逓減の法則による、プログラムコード生成の現実は、
さらに厳しいものでした。その考え方をグラフで表すと、以下の通りになります。








ブルックス,Jrが示す限界収穫逓減の法則




ブルックス,Jrが示す限界生産物曲線










なんと、プログラマー(労働投入量)の数が、
ある一定数を超えると、出来上がるプログラムコード数が、減少していくのです。
1人当たりのプログラムコードの生成数も、プラスからマイナスに転じます



ブルックス,Jrの著者、「人月の神話」の、復刻版書評を書いた人が、
上の2つのグラフについて、的確な表現をしています。



"プログラマーたちの強度作業にはどうしても必要になる費用がある。チームのやり取りのメンバーは会議に出席したり、プロジェクトの計画案を練ったり、電子メールのやりとりをしたり、プログラムの接続方法について相談したり、パフォーマンスのチェックに労力を使ったりといった具合に『時間を浪費』することになる(中略)マイクロソフト社では、チームのなかに少なくとも1人は、他のメンバーが着るTシャツのデザインに専従する人員がいる、ということにもなりかねないのだ"

ポール・クルーグマン「クルーグマン・ミクロ経済学」東洋経済新報社(P223)



つまり、ソフトウェア開発チームの人数が、多くなりすぎると、
メンバー間での、間接的なコミュニケーションに時間が費やされ、
本来行うべき、プログラミング業務が出来なくなるというこです。



経済学は「陰鬱な科学」か?




限界生産物が逓減していくということは、ブルックス,Jrの洞察によって、
はじめて発見されたことではありません。


以前登場した、18世紀・イギリスの経済学者、ロバート・マルサス
「人口論」でも、限界収穫逓減の法則に基づいた、食糧危機について、やはり論じていました。



「人口論」の結論を述べると、限りある土地の下では、
農業生産量は、「倍数」でしか増えないの対し、人口は、「累乗」で増加してしまうということです。



やがて、飢餓と疫病(と付随的に発生する戦争)による、人口抑制が行われたときに、
人類は生き残り、常に貧困状態にあるのが当たり前、というすさまじい結論です。





台風一過

台風一過 / amika_san




時おり、「経済学は陰鬱な科学である」と揶揄されることがあります。
それは、上記のような悲惨な結果について、危惧された言葉である、と考えられています。
しかしながら、このようなマルサスの結論は、正しかったのでしょうか?
(つづく)











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